阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」
「ハコ企業」餌食にされた側のリベンジ
2014年09月29日 [reuters]
9月18日の読売新聞に「ブローカー支配『箱企業』 不振の上場企業操る」と題する記事を見かけた。株式市場を侵食する反市場勢力がハコ企業を手玉にとって資金調達し、それの一部は反社会的勢力に流れているとの内容である。
すでに行政処分が発表された会社を例にとったあっさりとした記事だったが、一般紙がハコ企業を取りあげるのだから、その勢力拡大が放置できないほど大きくなってきたことの証かもしれない。
日本では監督官庁や証券取引所の監視が甘く、反市場勢力の餌食になる企業は後を絶たないが、餌食にされる側もいいようにやられるばかりではなさそうだ。
先日、東証マザーズ市場に上場する太陽光発電関連企業の関係者から相談を受けた。聞けば彼らの会社が反市場勢力の乗っ取られてしまい、架空受注など虚偽であることが強く疑われる適時開示を連発して資金調達しているという。
彼らとしては「すでに商圏が大きく損なわれてしまったため、会社の再建は不可能だろうが、せめて反市場勢力を告発して市場から駆逐したい」とのことだった。
告発の準備を進めているのは、会社を乗っ取られた旧経営陣のひとり。ITベンチャーを立ち上げて上場を果たしたが、買収した企業がリーマン・ショックの影響で期待したようには収益をあげられず、のれん代の償却を迫られた。償却すれば損失が膨らみ、上場廃止基準に抵触しかねないため、非上場企業との経営統合に踏み切った。
しかし統合に際して発行済み株式のかなりのポーションを握られ、当時の経営陣は翻弄され、最後には追い出されるようにして辞表を提出した。
この人物は自分が役員を辞任した後、乗っ取り側が会社でどのような不正を行ってきたのかを調べ上げ、関係者にも聞きとりを進めたそうだ。
さあ、復仇を遂げる時が来た。疎漏のない告発状をどのように作成すればいいのかを研究し、どのように告発すれば効果的なのか、戦略も練った。近く証券取引等監視委員会ほか、いくつかの官庁に告発状を提出する計画である。
会社を追い出された経営者が会社の不正を徹底的に調べ上げ、告発する展開はオリンパスの損失隠し事件を上からなぞっているかのようだ。
本誌でも東証2部上場の投資会社が虚偽の情報開示によって個人投資家から投資資金を呼び込んでいると報じ、この会社の経営は内外から揺さぶられている。本誌編集部には、内部告発者と思われる匿名の人物から、今も情報提供が続いている。
マスメディア関係者によると、「(告発者から事情聴取した)警視庁捜査二課は最近、取材に対するガードを堅くしている。まず間違いなく水面下で動いている」というから、捜査当局が何らかの動きを見せる公算は大きいと見てよかろう。
上場企業を食い物にする勢力に対する反転攻勢から目を離せない秋は、まだ始まったばかりだ。
(この記事は9月29日にロイターに配信した記事に加筆したものです)
投稿者 阿部重夫 - 11:08| Permanent link | トラックバック (0)