御嶽山噴火:死の頂 動かぬ6人 沈痛の緊急消防援助隊

毎日新聞 2014年09月30日 04時00分(最終更新 09月30日 07時46分)

捜索のため、御嶽頂上山荘に入る救助隊員ら=御嶽山山頂付近で2014年9月29日午後0時35分、本社ヘリから山田尚弘撮影
捜索のため、御嶽頂上山荘に入る救助隊員ら=御嶽山山頂付近で2014年9月29日午後0時35分、本社ヘリから山田尚弘撮影

 物陰に隠れるように倒れた人、灰に埋もれルートが分からない登山道−−。緊急消防援助隊として愛知県から出動した部隊の男性消防士長(32)が29日、毎日新聞の取材に対し、御嶽山(おんたけさん)山頂付近で心肺停止の6人の登山客らを発見した際の様子などを語った。噴火直後から負傷者らの治療を担った災害派遣医療チーム(DMAT)も同日、「大噴火するかもしれないと思うと怖かった」などと話し、自らの死を意識しながらの作業だったことを明らかにした。

 援助隊は同日午前6時50分ごろ、長野県木曽町の黒沢登山口から入山。先頭の隊員が有毒ガスの検知器を携行し、進んだ。心肺停止とみられる6人の姿を見つけたのは山頂の剣ケ峰周辺だった。前日の28日に発見されながら搬送を断念したためか、6人のうち4人の体には毛布が掛けられていた。

 6人のうち3人は剣ケ峰山荘南の田の原側で倒れていた。消防士長は「(山荘に逃げ込もうとして)田の原側から登って逃げてきた人だったかもしれない」。現場は、どこが登山道なのか分からないほど灰に埋もれていたという。

 残りの3人は山荘のテラスで見つかった。1人はテラスの下の足場部分に、身を守るためなのか、隠れるようにして倒れていた。他の男女とみられる2人は壊れたテラスに並んであおむけになっていた。「カップルだったのかもしれないなと思った」。沈痛な表情を隠そうともしないで、消防士長はつぶやいた。山荘の屋根には灰が降り積もり、部分的に石などによって壊れていた。

 一部には毛布が掛けられていたが、搬送や治療の優先順位を決めるトリアージのタグは付けられていなかった。消防士長は6人全員に救命の見込みがないとされる黒のタグをそっとつけたという。

 隊長(49)によれば、同隊が火山災害の現場に行くのは初めて。担架など20キロ近い荷物を持って登る隊員もおり、疲労の色は濃いという。取材に対し「いつ噴火するか分からない危険な状況だった。(常に)全員を救えるわけではないから」と感情を抑えるように語った。【野口麗子】

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