御嶽山噴火:DMAT医師「噴石で骨折、やけど多く」

毎日新聞 2014年09月29日 22時57分

 御嶽山の噴火で救出された負傷者らの応急処置などにあたった信州大医学部付属病院(長野県松本市)の災害派遣医療チーム(DMAT)のスタッフが29日、毎日新聞の取材に応じ、発生48時間の切迫した状況を振り返った。「自衛隊のヘリコプターで負傷者を救出できなければ犠牲者はもっと増えていたかもしれない」と語った。

 DMATは、大規模災害などが発生した現場で急性期に活動するために専門的な訓練を受けた医師、看護師、業務調整員で構成される医療チーム。同病院救急科の小林尊志医師(44)と秋田真代医師(30)は、噴火があった27日の午後5時半ごろにDMATの活動拠点となった長野県立木曽病院(木曽町)に入った。自力で下山した患者がぽつぽつと病院に入ってきた頃だった。

 呼吸の苦しさを訴えたりせき込んだりする症状が特徴的で、火山灰を含む熱風を吸い込んだことによる気道熱傷のほか、噴石による軽い打撲もみられた。「時間がたつにつれ重症者が増えると予想した」(小林医師)。

 28日午前5時半、自衛隊などの捜索活動で負傷者が見つかることに備え、5合目にある八海山神社付近で待機した。秋田医師は「目の前で噴煙の太さが変わっていく。大噴火するかもしれないと思うと怖かった」と漏らす。「死を覚悟した」という同僚もいた。

 昼前に木曽病院に戻ってからは様子が変わっていく。搬送や治療の優先順位を決めるトリアージで最優先を意味する「赤」と判定するケースが増えていた。搬送された患者の火山灰にまみれた服を脱がせて水のシャワーで除染する。「赤」の患者は噴石で骨折ややけどを負っていた。「生死を分けたのはちょっとした差だった。それは運だ」と小林医師は言う。

 一方、噴火による被害が山頂周辺に限定的だったことは活動する上では好材料だった。過去に出動した東日本大震災などの地震・津波災害との違いについて「拠点となった県立木曽病院の機能に被害がなかったためDMATとしてはうまく機能した」(小林医師)。DMATの参集拠点となった信州大病院で業務調整に当たった橋本麻衣子さん(32)も「携帯電話も含めたライフラインがしっかりしていたことも大きかった」と分析する。

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