御嶽山噴火 降り続く噴石、ぬかるむ火山灰…陸自指揮官、過酷な捜索状況明かす
いまだ噴煙が立ち上る山頂付近に取り残された登山者の捜索に当たる陸上自衛隊と長野県警の現場指揮官が29日、産経新聞などの取材に応じ、過酷な現場の様子を語った。
有毒ガス、火山灰、噴石…。幾重もの障害に阻まれ、目前の登山者を収容できずに捜索中断を余儀なくされる。命の危機とも背中合わせの捜索現場の様子が明らかになった。
標高約3千メートルの山頂付近。「誰かいらっしゃいますかー」。隊員は見渡す限り灰に覆われた急斜面で声を張り上げ、周囲を見回す。自分たちのかけ声以外には「ゴゴゴゴゴ…」と不気味にうなる火山の音だけしか聞こえない。登山者を発見すると声をかけ、反応がなければ、呼吸を確かめて脈を取る。収容困難な谷間近くで発見することもある。全身が灰に埋もれていれば、今の方法では見つけることは難しい。
噴火翌日の28日、山頂付近で指揮を執った県警機動隊の金森勉副隊長(54)はこうした現場の様子を明かし、「今の捜索は(灰の上の)見える範囲に限られる」と語る。
「活動中も小さな石が降ってくる」。陸上自衛隊第13普通科連隊の中村文彦中隊長(46)はこう話し、迷彩服に付いた噴石の破片をつまみ取った。小規模の噴火は続いており、石粒の雨が頭上に降り注ぐ。二次噴火に巻き込まれる可能性も少なくない。
地面には火山灰が50センチも降り積もっている。救助隊は最大で30キロになる重装備で、麓から4時間ほどかけて現場にたどり着いたところで、膝まで埋もれる灰の層に足を取られる。噴火翌日の28日は比較的乾燥した砂のような灰だったが、朝晩の寒暖の差から結露が灰に吸収され、「今はぬかるみ、滑りやすい状態」という。地面の灰は日々増え、捜索環境は悪化している。
最大の障壁は硫黄を含む有毒な硫化水素だ。28、29両日とも、捜索中に硫化水素濃度が高まり、救助活動は午後早くに中断を余儀なくされた。県警も自衛隊も装備に硫化水素を防ぐマスクがなく、やむなく防塵マスクを使う。ゴーグルをかけても「目が痛む」(金森副隊長)。風向きが変われば、周囲の視界はたちまち悪化し、硫化水素濃度の測定器が危険値を知らせる。
心肺停止状態とみられる登山者を搬送中に収容を断念することもあった。金森副隊長は「非常に心苦しい。個人なら救助を続けたいが、隊員の命を預かる身ではそれは間違いとなる」と現場の苦しみを語った。