吉田所長と同窓「奈良林直北大教授」が朝日の反原発報道を糺す!
吉田調書の誤報は撤回されたが、いったいどうしてこうした記事が書かれたのか。奈良林直・北海道大学大学院工学研究院教授(原子炉工学)が、反原発報道を糾(ただ)す。
奈良林教授は、東京工業大学大学院の院生時代、吉田昌郎・福島第一原発所長(昨年7月死去)と同じ研究室で学んでいた。
「彼は同じ大学の1年後輩です。研究室では英文の教科書を分担して日本語に翻訳し、演習問題も解いて、勉強しあう“輪講”を毎週一緒にしていました。明るい人柄で成績も優秀でしたが、同時にボート部の活動も行なっており、勉強とスポーツを両立させていました」
大学院を修了後、吉田氏は東京電力に就職する。
「私たちの研究室から彼の他にも後輩が東電に入りましたが、その彼らから吉田所長は人望の厚い上司だったと聞いています。3・11の事故直後、そんな吉田所長のもとで、線量の高い発電所の中で、懸命に作業を続けた50名を超える彼の部下たちは海外からも“福島フィフティー”として称賛されていました」
ところが、
〈所長命令に違反、原発撤退 福島第一、所員の9割 政府事故調の「吉田調書」入手〉(朝日新聞2014年5月20日付朝刊)
という記事が所員に対する印象を一変させた。
折も折、お隣の韓国でセウォル号転覆事故が発生し、船長らが乗客を置き去りにしたまま避難したことに批判が集中していた。記事は、所員も同様に卑劣な行動を取ったという印象を与えた。
奈良林教授は続ける。
「それを“吉田調書”で海外にも報道したため、称賛から一転、“国の危機を前にして逃げ出した東電社員”というレッテルを貼られ、国際的な日本の評価をも貶めてしまいました」
今回、政府は非公開だった吉田調書を公開し、朝日も記事を取り消したが、
「調書をどう読んでも所員が“命令違反”をしたなんていう結論には辿り着けません。問題となったのは3月15日ですが、その前日、3号機が水素爆発を起こした際に東電が公開したテレビ会議の中で、社長が所員の一時退避について議論しています。放射線のある環境下では、放射線障害を防ぐために被曝線量が許容値を超えると作業を禁止する法律があり、被曝量を抑えなければ事故に対応する所員がいなくなってしまう。ですから線量が異常に高くなった場合には一時退避が必要になることを、所員は共通認識として持っていたはず」
■真実を捩じ曲げる
奈良林教授がその証拠とするのが避難する際の所員の整然とした行動である。
「600人もの所員がバスで移動出来ている。東電が事前に一時待避の準備をしていたからそういった組織的な動きが出来た。しかもその日の昼には戻ってきている。撤退ではなく、あくまでも一時退避です。当時、福島第一にいた私の後輩は、所長の“避難!”という声を聞いています。吉田所長は撤退という言葉は使っていません。最前線で活動する所員の命を守ることが事故対応をする上で最も重要なことだと理解していました。それを命令違反などと貶めた朝日の責任は重い」
事実を歪めるような記事をなぜ書いたのだろうか。
「朝日は社説で脱原発を目指すと宣言しました。報道内容が原発を不利にするものだけに偏り、公正なメディアとは言えなくなった」
朝日新聞は11年7月13日の社説で反原発へと舵を切ったことを謳い上げた。
〈提言「原発ゼロ社会」 脱原発への道筋 高リスク炉から順次、廃炉へ〉
「朝日にはまず“脱原発”という社是があり、彼らが世に発信する記事はその目的を達成するためにあるものでしかない。吉田調書のスクープも、所員が逃げ出したと事実無根の見出しを付け、電力会社の無責任さを読者に印象付けて、原発は危険なものだという認識を植えつけるために書かれたとしか思えません。そのためには真実を捩じ曲げることを平気で行なう。彼らは自分たちの社是に障害になるなら、その力を個人に向けることも厭わない。去年7月17日の朝日記事は私が日本原子力発電から150万円、原子燃料工業から50万円の寄付金を受け取ったと報じました。私がその金を個人的に懐に入れたような書き方ですが、本人には1円も入りません。寄付金は学生を教育するために使われるものであり、大学の予算に組み込まれる。そういう説明を省いて書けば読者は賄賂のようなものだと勘違いするでしょう」
朝日は原発問題でもミスリードをしていたのである。
奈良林教授は、東京工業大学大学院の院生時代、吉田昌郎・福島第一原発所長(昨年7月死去)と同じ研究室で学んでいた。
「彼は同じ大学の1年後輩です。研究室では英文の教科書を分担して日本語に翻訳し、演習問題も解いて、勉強しあう“輪講”を毎週一緒にしていました。明るい人柄で成績も優秀でしたが、同時にボート部の活動も行なっており、勉強とスポーツを両立させていました」
大学院を修了後、吉田氏は東京電力に就職する。
「私たちの研究室から彼の他にも後輩が東電に入りましたが、その彼らから吉田所長は人望の厚い上司だったと聞いています。3・11の事故直後、そんな吉田所長のもとで、線量の高い発電所の中で、懸命に作業を続けた50名を超える彼の部下たちは海外からも“福島フィフティー”として称賛されていました」
ところが、
〈所長命令に違反、原発撤退 福島第一、所員の9割 政府事故調の「吉田調書」入手〉(朝日新聞2014年5月20日付朝刊)
という記事が所員に対する印象を一変させた。
折も折、お隣の韓国でセウォル号転覆事故が発生し、船長らが乗客を置き去りにしたまま避難したことに批判が集中していた。記事は、所員も同様に卑劣な行動を取ったという印象を与えた。
奈良林教授は続ける。
「それを“吉田調書”で海外にも報道したため、称賛から一転、“国の危機を前にして逃げ出した東電社員”というレッテルを貼られ、国際的な日本の評価をも貶めてしまいました」
今回、政府は非公開だった吉田調書を公開し、朝日も記事を取り消したが、
「調書をどう読んでも所員が“命令違反”をしたなんていう結論には辿り着けません。問題となったのは3月15日ですが、その前日、3号機が水素爆発を起こした際に東電が公開したテレビ会議の中で、社長が所員の一時退避について議論しています。放射線のある環境下では、放射線障害を防ぐために被曝線量が許容値を超えると作業を禁止する法律があり、被曝量を抑えなければ事故に対応する所員がいなくなってしまう。ですから線量が異常に高くなった場合には一時退避が必要になることを、所員は共通認識として持っていたはず」
■真実を捩じ曲げる
奈良林教授がその証拠とするのが避難する際の所員の整然とした行動である。
「600人もの所員がバスで移動出来ている。東電が事前に一時待避の準備をしていたからそういった組織的な動きが出来た。しかもその日の昼には戻ってきている。撤退ではなく、あくまでも一時退避です。当時、福島第一にいた私の後輩は、所長の“避難!”という声を聞いています。吉田所長は撤退という言葉は使っていません。最前線で活動する所員の命を守ることが事故対応をする上で最も重要なことだと理解していました。それを命令違反などと貶めた朝日の責任は重い」
事実を歪めるような記事をなぜ書いたのだろうか。
「朝日は社説で脱原発を目指すと宣言しました。報道内容が原発を不利にするものだけに偏り、公正なメディアとは言えなくなった」
朝日新聞は11年7月13日の社説で反原発へと舵を切ったことを謳い上げた。
〈提言「原発ゼロ社会」 脱原発への道筋 高リスク炉から順次、廃炉へ〉
「朝日にはまず“脱原発”という社是があり、彼らが世に発信する記事はその目的を達成するためにあるものでしかない。吉田調書のスクープも、所員が逃げ出したと事実無根の見出しを付け、電力会社の無責任さを読者に印象付けて、原発は危険なものだという認識を植えつけるために書かれたとしか思えません。そのためには真実を捩じ曲げることを平気で行なう。彼らは自分たちの社是に障害になるなら、その力を個人に向けることも厭わない。去年7月17日の朝日記事は私が日本原子力発電から150万円、原子燃料工業から50万円の寄付金を受け取ったと報じました。私がその金を個人的に懐に入れたような書き方ですが、本人には1円も入りません。寄付金は学生を教育するために使われるものであり、大学の予算に組み込まれる。そういう説明を省いて書けば読者は賄賂のようなものだと勘違いするでしょう」
朝日は原発問題でもミスリードをしていたのである。
「特集 十八番の「自虐」はどこへ行った? 『朝日新聞』謝罪が甘い!!!」より