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「慰安婦」誤報はついで! 池上問題感想が「思いもよらぬ批判」! 聞き捨てならない台詞がある「朝日新聞」会見の傲岸
 昨年10月、みのもんたが会見を開いて以来、わが国はどういうわけか、空前の謝罪ラッシュが続いている。佐村河内守氏、小保方晴子氏、故笹井芳樹氏、野々村竜太郎氏……。だが、朝日新聞社の社長が深々と頭を下げるとは、つい先日まで誰が予想しただろう。

 なにしろ、慰安婦報道における「吉田証言」を誤報と認めて取り消しながらも、謝罪はかたくなに拒み、その辞書に「謝罪」の言葉はないと思われた朝日新聞である。それが謝罪会見とはどういう風の吹き回しか。

「8月5日、6日に検証記事を載せた時点で、謝罪会見を開くべきでした。今回の会見は、吉田調書が公開されるに当って、朝日が自らの正当性を堅持できなくなり、やむにやまれず開いたとしか思えません」

 東京基督教大学の西岡力教授はそう看破する。ちょうど池上彰氏のコラムを封殺し、豪雨のようなバッシングを浴びていたところである。そのうえ政府が「吉田調書」を公表すれば、

「5月20日付のスクープ記事が誤報だとバレて、翌朝、新聞全紙から追い込まれる。その前に慌てて会見を開いたのでしょう」(麗澤大学の八木秀次教授)

 しかし、“慌てる朝日はもらいが少ない”とでも言うべきか、調書が公表されたその日に会見を開く姑息さもさることながら、木村伊量社長の、そして朝日新聞そのものの傲岸不遜な体質が、そこかしこに浮き出てしまったのである。

 まず、木村社長は「吉田調書」の誤報を認め、〈読者および東電のみなさまに深くおわびを申し上げます〉と、謝罪したが、

「影響の規模を鑑みて、読者ではなく国民全体におわびすべきではないかと、素朴な疑問が浮かびました」

 朝日OBで元ソウル特派員の前川惠司氏の、至極もっともな感想だが、「影響の規模」がさらに大きな問題があることを忘れてはなるまい。防衛大学校名誉教授の佐瀬昌盛氏が言う。

「問題の根深さや世界に与えた影響を考えれば、東電の吉田調書の誤報と慰安婦の虚報とでは、比べものになりません。吉田調書の誤報も悪質さは感じられ、海外の新聞にも取り上げられましたが、こちらは国内問題。一方、慰安婦の虚報は世界中に“日本人悪人論”を撒き散らし、対外関係にも悪影響を与えたのです」

 ところが、会見で木村社長はなんと言ったか。

〈会見は、吉田調書報道についての説明が主題ではございますが、この間、さまざまなご批判、ご指摘をいただいております慰安婦報道についても、ご説明させていただきます〉

 早い話が、この会見では、慰安婦問題の誤報については“ついでに”すぎないというのである。

「吉田調書の問題に比べて、慰安婦問題を相対的に小さく見せるという狙いがあったとしか思えません」

 と話すのは八木教授だが、事実、木村社長は慰安婦報道に関しては、

〈吉田氏に対する誤った記事を掲載したこと、そして、その訂正が遅きになったことを読者のみなさまにおわびいたします〉

 と、限定的に謝罪したにすぎないのだ。佐瀬氏は、

「8月5日の検証記事は、強制連行の有無、吉田証言、軍の関与を示す資料、挺身隊と慰安婦の混同、植村隆記者が書いた元慰安婦の証言、という5つの柱が立てられていましたが、朝日が取り消したのは吉田証言にもとづく記事のみ。木村社長が会見で謝罪したのも吉田証言についてだけで、ほかの柱については説明も謝罪もありませんでした」

 と指摘。しかも、その記事について問われ、

「木村社長は〈自信を持っている〉と語り、読者にしか謝らなかった。日本国民全体および日本の国益を大きく毀損し、国際社会での日本国民と日本国の名誉を大きく傷つけたことには、なんら責任がないと言っているに等しいのです」

 京都大学名誉教授の中西輝政氏はそう語る。拓殖大学の藤岡信勝客員教授は、そんな朝日の狙いを、

「吉田証言はウソでも、それは様々な資料の中のひとつにすぎないと見せることで、“慰安婦問題”を存続させるための作戦」

 と見るが、実はかなり稚拙な「作戦」である。と言うのも、会見で産経新聞の阿比留瑠比編集委員に、こう問われたときのこと。

〈(8月5日の検証記事の中で)植村隆元記者のことに関して、事実の捻じ曲げはないと書いております。しかし、(元慰安婦の)金学順さんが親にキーセンで売られたことは周知の事実であって、それもその後、植村さんの記事で訂正されておりません。(中略)植村さんの記事には『女子挺身隊の名で戦場に連行』と書かれており、これは明らかな事実の捻じ曲げだと思いますが、いかがですか〉

 編集担当(9月12日付で解任)の杉浦信之取締役は、

〈朝日新聞としては、キーセンだから慰安婦になっても仕方ないというふうな考え方はとっておりません〉

 と答えたのである。

「まず答えになっていない。論点のすり替えだと思いましたし、杉浦さんが問題の本質がどこにあるかを把握しているのかどうかさえ、はなはだ疑問です」

 と阿比留氏。日本軍による強制連行があったかどうかが問われているのに、一般的な人権問題にすり替えるとはお粗末すぎる。

■自浄能力がない

 また、木村社長の責任回避の姿勢は、こんな発言にも表れていた。

〈この(慰安婦の)問題で誰かの責任を問うて、さかのぼって処分するということは、難しい問題ではないかと考えておりますが、これも含めまして、新たに設置をお願いしております第三者委員会の調査結果も含めまして、総合的に判断していくことになろうかなと思っております〉

 だが、話はもっと単純なはずだ。佐瀬氏が木村社長の心中を忖度するに、

「慰安婦問題は歴代社長が責任逃れを重ねてきた問題だから、自分だけが貧乏くじを引きたくないのかもしれません。しかし、現役の社長が責任を追及されるのは当然なのです」

 しかるに、自分では判断しないという。また、慰安婦報道が国際的な日本批判に与えた影響を問われると、今度は杉浦取締役が、

〈今回、まず新しい第三者委員会に具体的な検証を委ねたいと考えております〉

 と、“丸投げ”を示唆した。朝日には自浄能力がないと、自ら宣言したようなものではないか。また、

「第三者委員会で検討すると、問題解明までに時間がかかりすぎる。単なる時間稼ぎなのです。人選も、西岡力さんとか櫻井よしこさん、産経新聞の阿比留瑠比記者ら、朝日に批判的な人を呼べば、本当に反省しているとわかりますが、身内で固めたら客観的な検証などできません」(八木教授)

 そもそも次のような発言をする社長が、身内に厳しい人を呼ぶだろうか。池上彰氏のコラム不掲載問題を問われた木村社長は、

〈これがいろんな形で(池上氏との)途中のやり取りが流れて、言論の自由の封殺であると、私にとっては思いもよらぬ批判を頂戴いたしました〉

 と答えたのである。

「池上さんの言論の自由を侵したのだから、批判は予想できたはず。なのに〈思いもよらぬ批判〉と言うのは、それほどまでに慰安婦報道について自己正当化し、守りたい部分がある。そうとしか思えません」

 と、呆れるのは中西氏。藤岡客員教授も言う。

「批判されて当たり前じゃないですか。それこそ“思いもよらぬ発言”で、朝日新聞社の傲岸不遜な体質が、よく表れています」

 最後に、木村社長のこんな発言も引用しておこう。

〈吉田調書は朝日新聞が独自調査に基いて報道することがなければ、その内容が世に知られることはなかったかもしれませんでした〉

 誤報について謝罪しながら、なお誇らしげな姿勢に、十八番の自虐は微塵も見られないのである。

「特集 十八番の「自虐」はどこへ行った? 『朝日新聞』謝罪が甘い!!!」より
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