Book Cafe 矢来町 ぐるり

国内

天声人語から投稿川柳まで「朝日新聞」謝罪大バーゲン一覧――「朝日新聞」の謝罪が甘い!(3)
 あの威勢の良さは一体どこへ行ったのか――。ひと月前には頑なにお詫びを拒んでいた築地の大新聞だが、一転、謝罪に追い込まれると、今度は、天声人語から投稿川柳欄まで、「ごめんなさい」の大合唱を始めたのだ。おかげで紙面は、謝罪の大バーゲンと化している。

 ***

 誤報を認めた後も、朝日は実に攻撃的であった。それを論じた小誌他に抗議したばかりか、広告掲載まで拒否したのは周知の通りだし、遡れば、5月の『吉田調書』の報道後も、批判勢力にはせっせと抗議書を送りつけていたのである。

 しかし9月11日に“全面降伏”すると態度は一変。

「奇しくも9・11に始まったので“同時多発謝罪”と呼ぶことにしました」

 とコラムニストの勝谷誠彦氏が言うように、気付いただけでも、9月13日付の社説で(以下は大要)、

〈深くおわびします〉

〈重い問題だと受け止めています〉

〈私たち論説委員は、ときに人や組織を批判する役割を担っています。しかし、その土台を大きく損なってしまいました。どんな主張をしても「お前にそれを言う資格があるのか」と厳しく問われるからです〉

 とひれ伏したのをはじめ、同日の「天声人語」では、

〈「吉田調書」については、今年5月の小欄でも取り上げている。「命令違反」の表現が誤っていたことを、おわびいたします〉

 続けてその日の夕刊でも、

〈爪楊枝ほどの矢でも事実の土台が揺らげば害になる。小欄の過剰な表現を撤回しおわびします〉

 と、いつもは傲慢なコラム「素粒子」が記したが、確かにこの欄、〈「フクシマ50」の称賛の裏に勝手に撤退した650人。傾く船から逃げだすように〉(5月20日付)とまで書いていたのだから、土下座も当然。

 翌14日は、エッセイ「日曜に想う」の中で、特別編集委員の星浩氏が、

〈35年間の記者生活で感じるのは、朝日新聞内で時折、事実の発掘・報道とは別に、行き過ぎたキャンペーンを展開しようという動きが出てくることだ〉

 と“内部告発”までして「猛省」を誓ったのである。

 さらには、虚報とは縁遠い、読者投稿欄や川柳投稿欄までもが、こんな有様。

〈(「吉田証言」と「吉田調書」の)記事に関連する投稿を寄せてくださった方をはじめ、すべてのみなさまにおわびします〉(14日付「声」)

〈5月の本欄で吉田調書に材をとった句を掲載しました。投句者、読者、すべての関係者の皆さまにおわびします〉(15日付「朝日川柳」)

 また、9月13日には、朝日で「吉田証言」を中心的に報じてきた清田治史・元取締役が、勤務先だった大学の職を突然辞したという。

■“もう新聞ではない”

 とは言え、そこは朝日。一見、頭を下げているように見えるけれども、その腹の内は……ウォッチャーに聞いてみると、やはり行間に“何か”を感じていた。

「9月13日の社説は良かったですよ。ただ、出した日が問題でした」

 とは、先の勝谷氏である。

「本当なら、会見の日の朝に書かなければいけない。しかし、朝日はその日もその翌日も出さず、2日後にあの社説を掲載したのです。会見後の風向きを見ながら考えて出したのでしょうが、その精神がずるいんです」

 麗澤大学の八木週次教授も紙面には引っかかった口だという。

「社説で謝る一方、すぐ横の声欄では“この時とばかりに朝日バッシングを繰り返した政治家、評論家、メディアはあまりに情緒的だった。恣意的な報道も多く、客観性や冷静な視点に欠けている”と自らを擁護する投稿を載せている。何とも言い訳がましい印象です」

 ジャーナリストの古森義久氏もバッサリ。

「朝日はこれまで、慰安婦問題にしろ、吉田調書にしろ、虚の部分に立脚し、過激な言葉で人を叩いてきた。今これだけ謝らなくてはならないのは、逆にそれだけ紙面のいろいろなところで、誤報に基づいて“敵”をクソみそに叩いてしまっていた現れです。本当に恥ずかしいことだと思います」

 ちなみに、先の「天声人語」はこうも述べている。

〈気に入らない意見や、不都合な批判を排した新聞は、もう新聞ではない〉

 であれば、そんなものを扱って金を取るのはいかがなものか。先の八木氏は、

「各人がバラバラに謝るくらいなら、お詫びの特集号を作って、無料で読者に配るべきでしょう」

 と述べるけれど、確かにそれくらいの行動を示さなければ、とても人々の心に謝罪の念は届かないと言えるのだ。

「特集 十八番の「自虐」はどこへ行った? 『朝日新聞』謝罪が甘い!!!」より
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 国内
  • 国際
  • ビジネス
  • スポーツ
  • エンタメ
  • 特集・連載
  • レビュー
Copyright © SHINCHOSHA All Rights Reserved. すべての画像・データについて無断転用・無断転載を禁じます。