御嶽山の噴煙から逃れ、山小屋で一夜を過ごした登山者らが28日午前、岐阜県下呂市に下山し、噴火当時の山頂付近の様子などを生々しく振り返った。
山頂の剣ケ峰にある御嶽神社の社務所。その近くで千葉県松戸市の女性(69)は妹ら2人と昼食を食べようとリュックを下ろした瞬間、爆音と噴煙が上がった。降り注ぐ灰や噴石。リュックで頭を防いだ。後で確認したところ中の魔法瓶が壊れていたといい、「命を守ってくれた」と振り返った。
噴火当時、周囲には肩や手、頭を負傷した人がいて、噴煙をかぶってうつぶせになったままの人もいた。女性は膝から下が灰で埋まり、周囲に助けられ何とか抜け出した。「倒れていた人はどうすることもできなかった」。逃げ込んだ社務所は粉じんで真っ暗。「痛い痛い」。負傷した人の声が響く。避難のため9合目の山小屋「五の池小屋」に向かう途中では、灰に埋もれた人を何人も目撃した。
女性が一夜を過ごした山小屋では36人が避難し、肩に重傷を負った女性も運び込まれた。出血しており、管理人の市川典司さん(44)らが「気分はどうですか」と呼びかけたり、脈を取るなどして、朝まで付きっきりで看護したという。
山小屋は噴石による被害はなく、避難者はおにぎりや味噌汁を食べ、午後9時ごろに就寝。不安から泣き出す小さな男の子もいた。市川さんは「何の兆候もなかった噴火にショックを受ける人も多かった」と話した。
一夜を明かした登山者は3時間ほどかけて下山。帽子やリュックサックには白い灰が積もり、一様に疲れ切った様子。足を引きずって歩く男性の姿も。迎えに来ていた知人との再会を喜び合う光景も見られた。