「李香蘭」の名で知られた山口淑子さん【拡大】
87年出版の自伝「李香蘭 私の半生」がベストセラーとなり、テレビドラマや劇団四季のミュージカルになるなど、戦乱期に揺れ動いた人生が注目された。まさに波瀾万丈だったが、晩年のインタビューでそれを指摘された山口さんは「波の中にいる人はそんなこと考えないわよ。ただ懸命に生きてきただけ」と、笑って否定していた。
親交の深かった女優・司葉子(80)の話 「私が東宝に入った当時、山口淑子さんは近寄りがたいほどの大スターでしたが、とても優しく、縁談をくださったこともあります。私の主人(相沢英之・元衆院議員)の選挙応援に遠くまで来てくださるなど人情深い方でした。満州でのご苦労も含め、幅の広い人生をまっとうされたのだと思います」
「ミュージカル李香蘭」を手がけた劇団四季・浅利慶太氏(81)の話 「山口さんは上演を毎回楽しみにしてくださっていました。劇場でお見受けした、あの気品ある微笑みが今でも脳裏から離れません。彼女が抱き続けた『中国と日本を思う心』を、若い日本のお客様に伝えたい。その一心で作った作品です」
フジテレビ系「さよなら李香蘭」に主演した女優・沢口靖子(49)の話 「25年前に山口さんの半生を演じさせていただきました。女優として、歌手として一世を風靡(ふうび)された裏で、日本と中国のはざまで大変ご苦労されたことが思い起こされます」
山口 淑子(やまぐち・よしこ、本名・大鷹淑子=おおたか・よしこ)
1920年2月12日生まれ、中国出身。旧満州(現中国東北部)で育ち、38年に「李香蘭」の名で映画デビュー。日中両国で絶大な人気を集めた。終戦後に売国奴の疑いで裁判にかけられたが、日本国籍が証明され46年に帰国。「山口淑子」として多くの映画に出演した。51年に世界的彫刻家イサム・ノグチ氏と結婚し、56年に離婚。58年に外交官の大鷹弘氏と再婚した。69年から「3時のあなた」の司会を務め、74年に参院選に当選し3期18年務めた。
(紙面から)