御嶽山噴火:自然災害から観光客どう守る?

毎日新聞 2014年09月29日 11時00分(最終更新 09月29日 11時12分)

国が24時間監視を定めた47活火山についての周辺市町村の避難計画策定状況
国が24時間監視を定めた47活火山についての周辺市町村の避難計画策定状況

 登山客でにぎわう御嶽山(おんたけさん)(3067メートル)で起きた噴火は、一夜明けて甚大な被害が明らかになった。火山列島とも呼ばれる日本で、火山は地域の観光拠点ともなっているところが多いため、各地の自治体や観光業界に与えた衝撃は大きい。

 ◇業界は想定外 ガイドライン、リスク触れず

 「火山予知はある程度可能だと信じていたが、考えが甘かった」

 富士山観光を企画している山梨県富士河口湖町の旅行会社社長は、気象庁が発表している5段階の噴火警戒レベルで富士山と同じ最低の1(平常)だった御嶽山の噴火に驚きを隠さない。

 旅行会社が企画する火山へのツアー登山は、富士山をはじめ多くの国内の山で実施されている。だが今回のように、観光客でにぎわう中で起きた噴火で多数の被災者が出るのは極めて異例だ。業界団体の「全国旅行業協会」(加盟約5500社)は山岳事故を防ぐためのガイドラインを作成しているが、主な内容は天候の把握や引率者の人数の目安などで、噴火の危険性には言及していない。

 JTBの担当者によると、「安全なツアーを実施するため専門家の意見を聞き企画しているが、天候などの情報が中心」という。「今後は参加者の噴火への関心が高まる。専門家から安全性について積極的に情報を収集し、参加者に伝えていくことになるだろう」と話す。

 御嶽山では今月10日から体に感じない火山性地震が増え、11日には1日85回を数えた。80回を超えたのは、直後に噴火した2007年1月以来だったが、その後、火山性地震が減ったこともあり、気象庁は噴火警戒レベルを引き上げなかった。今回、被災者が多数に及んだ背景とされる。

 噴火の危険がある場合の入山規制は、原則として警戒レベルに基づき、登山道を所管する都道府県や市町村が実施するが、自治体独自に判断するケースもある。だが、政府が危険と判断しない状況での入山規制には、地元の行政関係者から消極的な声が上がる。噴火活動で形成された雄大な光景や周辺の温泉は、多くの地域の観光を支えているからだ。

 長野・群馬県境の浅間山のふもとの長野県小諸市の観光協会によると、27日は「観光客から不安の声もあった」。だが、28日は普段と変わらなかったといい、胸をなでおろす。

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