経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *基本内容の「ニッポンの理想・2兆円でできる社会」もご覧ください

「上げないリスク」の詭弁

2014年09月29日 | 経済
 物事は、代案と比較しなければ、優劣が分からないものだ。消費増税の計画をまったくの白紙にしてしまったら、それは「上げないリスク」があるだろう。しかし、増税に反対する者を、すべて「白紙化」論者と決めつけ、増税しかないとするのは、「わら人形」の詭弁というものである。

………
 消費税の追加増税を1年遅らせると、2015年度予算では、税収半年分の2.7兆円の穴が空くことになるが、日経の滝田洋一さんによれば、2014年度の補正予算では、国債の追加発行なしに4兆円の財源が用意できるそうだから、それをバラ撒かず、2015年度予算に組み込めば、むしろ、財政再建が進むのではないだろうか。

 補正予算を見送って、公共事業を追加しなければ、デフレ要因になり得るが、執行が逼迫し、民間工事に支障が出ている状況であるから、弊害は少ない。予備費を用意し、状況を見て追加するようにしておけば、もし、「息切れ」が来ても対応できる。逆に、消費増税で、所得と消費を抜いてしまうと、これらを後で追加することは、ほぼ不可能である。

 国債リスクというのは、増税すれば減るというものではなくて、成長率を落とすことでも生じる。債務比率が低く、プライマリーバランスも黒字だったイタリアが国債金利の急騰の危機に見舞われたのは、成長力を失ったと見なされたからである。これが、日本の財政当局以外では大きな教訓になっている。いまや、格付け会社さえ、単純に増税を評価しないのは、このためだ。

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 むろん、増税計画を形だけにしない工夫もいる。それは、一定の成長率や物価上昇率となったら、1%は必ず上げるとし、2020年までには10%にすると約束することだ。上げ幅を調整可能にし、一定の範囲内で時期を選べるようにするのは、ある意味、景気条項のリファインである。あとは、2%成長を維持すれば、2025年には、追加の消費増税がなくても、PBの赤字解消に到達できる。

 さらに、金利が一定以上に上がった場合には、利子・配当課税を20%から25%に引き上げると宣言しておけば、万全である。こうしておけば、支払い金利を税収増で賄えるようになるからだ。25%は諸外国に例のある税率であり、決して異常な水準ではない。こうして、成長の範囲内で、税収増が着実に図られるとなってこそ、国債への信認が増すのである。

………
 「上げないリスク」には、まったく兆候が見られないのに対し、3%上げた結果は、1.5%成長からゼロ成長への転落であった。そして、今度はゼロ成長の下で2%上げることになる。増税のリスクは、顕在的かつ破壊的である。これでどうして、リスクを比較して思い悩むのか、合理性の見地からは、理解しがたいところである。

(今日の日経)
 日本郵政・年金債務7000億円一括処理。エコノ・円安でも輸出伸びぬ謎・高級車値下げせす、家電は競争力低下。主婦で節約する92%。吉野家の非学歴体質。もっと減速する中国経済。経済教室・宇沢弘文追悼・岩井克人。

※外貨をどちらが取るかの生き残り競争で家電は負けたんだよ。値引きしない高級家電というジャンルは乏しかったからね。
ジャンル:
経済
キーワード
物価上昇率 格付け会社 日本の財政 プライマリーバランス
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