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特集

  • 朝日新聞社・木村伊量社長※無料

 あけましておめでとうございます。決戦の年、2014年があけました。朝日新聞が幾久しくこの国を代表する「トップジャーナリズム」として、人びとの信頼と時代の負託にこたえていけるかどうか、わたしたちはいま、大きな岐路に立っています。今年の戦いを勝ち抜かずして、朝日新聞の未来はありません。年の初めに当たり、改革に突き進む私の決意をお伝えし、みなさんの結束を呼びかけたいと思います。

 さて、安倍政権が誕生して1年余り。黒田日銀総裁が進める未曽有の金融緩和と、積極的な財政出動を柱とするアベノミクスによって、株価は大きく上昇し、円安の進行の恩恵を受けた輸出産業が牽引する形で業績が回復している企業が増えているようです。東京のデパートでは高級ブランド時計、貴金属などの高額商品が売れ、正月向けに販売された「おせち料理」の売れ筋商品の価格もいつもの年を大きく上回った、と報道は伝えています。各種の経済データの上では、総じて景況感は改善しているようです。

 しかしながら、地方ではアベノミクス効果で家計の収入が増えた、という実感が薄い人が少なくありません。景気回復はまだら模様、というのが実感に近いのではないでしょうか。4月からは消費税8%への増税が待ち受けています。それが個人消費や企業の設備投資を冷え込ませると、景気は再び下降線をたどるでしょう。政府予算の大盤振る舞いで、将来世代にツケを回さない財政再建への道筋はいっこうに見えてきません。大量の栄養ドリンクを飲んで一時的に元気になったように見えても、肝心の体質改善が進まないようなら、アベノミクスは今年、厳しい局面を迎えることになります。その行方に、わたしたちは目を凝らさなければなりません。

 日本をとりまく国際環境は厳しさを増しています。尖閣諸島・竹島の領有権や歴史認識問題をめぐる対立で、中国や韓国の新政権との首脳会談がいまだに開けないのは異常です。「戦後レジームからの脱却」を訴える安倍首相の昨年末の靖国神社参拝に、中国や韓国はさらに反発を強め、米国は失望感を表明しました。相互理解のもとで「開かれた国益」を求めるという長期的視点を欠いた、首相の短慮であったと私は思います。政治対話さえ拒む中国、韓国のかたくなな姿勢も疑問ですが、日本はことさらに反中、反韓ナショナリズムをあおることなく、あらゆる機会を通じて、粘り強く、対話の道筋を探るべきでしょう。国際社会に背を向け、独裁色を強める北朝鮮の動きも懸念材料です。日本海や東シナ海をこれ以上、不信と不毛な対立の場にしてはなりません。北東アジア地域の主要国間の信頼醸成と連携が、どれほど世界の平和と繁栄にとってもかけがえのないことか。戦後、一貫して近隣諸国との協調を訴えてきた朝日新聞の言論の力がいまこそ求められているのです。

 わたしたちが、いかなる犠牲を払っても未来に引き継ぐべき価値とは何でしょうか。それは、不滅のジャーナリズム精神です。

 「一強多弱」と評される政治状況のもとで、このところは政権の驕(おご)りが目立ちます。昨年成立した特定秘密保護法は、報道・言論の自由と民主主義の土台を台無しにする危険をはらんでおり、「不都合な真実」を隠したい権力側のさじ加減ひとつで、だれもが罪に問われかねません。広がる反対の声を無視した手荒な国会運営も容認できません。朝日新聞の紙面で全力をあげてこの治安立法に反対するのは、ジャーナリズムとして当然のことだと思います。

 現政権の視界の先に、憲法改正があることは疑いありません。現憲法をめぐっては、さまざまな角度から時代にそぐわなくなった点も指摘されてきました。もちろん、憲法は不磨の大典ではありません。しかし、あの無謀な自爆戦争によって他国を軍靴で踏みにじり、自国を焼け野原と化し、幾多の尊い命を奪ったことへの痛恨の思いと、不戦への誓いとともに、戦後日本が手にしたのが今の憲法なのではないでしょうか。古い衣服を脱ぎ捨てるように、軽い気持ちで反故(ほご)にするわけにはいかないのです。現政権が、数の力を頼みに、憲法の理念の柱である立憲主義を顧みず、国家が説く道徳に服することを国民に求め、時代錯誤の国家主義を前面に押し出した憲法改正をめざすのなら、わたしたちは固い決意をもって向かい合わなければならないでしょう。

 朝日新聞はけっして権力に屈しません。リベラルですが不偏不党、地に足のついたリアルに徹する報道姿勢を貫いてまいります。風圧にさらされ、筆を曲げて権力と折り合うくらいなら筆を折る。全部門が結束して苦難に耐え抜く。朝日新聞はそうした不屈の闘志に支えられた志の高い企業です。戦後日本は重大な岐路にあります。年頭にあたり、強い使命感と覚悟をすべての社員のみなさんに求めます。

 幸い、紙面はたいへん元気です。昨年度の「プロメテウスの罠」に続き、福島原発事故をめぐる一連の「手抜き除染」の報道で2年連続の新聞協会賞を受賞しました。最近も、猪瀬東京都知事を辞職に追い込んだ徳洲会からの5千万円供与や、日展をめぐる不正など、他の追随を許さない見事な特報が続いています。地を這う粘り強い取材で真相に迫る調査報道の伝統は、脈々として受け継がれています。何よりも事実と細かなデータにこだわってください。「切り捨て御免」の高飛車な記事では読者の共感を呼びません。安手の正義感はジャーナリズムを堕落させる麻薬です。香り高くエスプリのきいたコラム、わかりやすく説得力のある解説記事や、批判された側をもうならせる奥行きのある論評を、今年も読者に届けてください。

 良質で信頼されるジャーナリズムが、勝ち残りの絶対条件であることは言うまでもありません。しかしながら、率直に言えば、他を圧倒する内容の記事や論評が連日の紙面を飾ったとしても、それで朝日新聞の勝ち残りが保証されるほど、甘くはないのも事実です。昨年、ウォーターゲート事件の調査報道で知られる米国の名門ワシントン・ポスト紙が、ネット通販の巨人アマゾンの創業者に買収された衝撃は、記憶に新しいところでしょう。わが国の日刊新聞の市場は毎年2%以上縮んでいます。「朝日新聞に限って大丈夫だろう」といった根拠のない楽観はただちに捨ててください。メディアの世界は、絶え間ない興亡が続く未体験ゾーンに突入しているのです。

 朝日新聞がこの国に欠かせない言論・報道機関として存在し続けるには、成功体験を捨て、急激な環境変化にも即応できる、しなやかでチャレンジングな組織に変え、経営基盤を徹底して強化していくしかありません。つまりは、創業から135年を迎える朝日新聞の「棚卸し」でしょうか。ジャーナリズムが輝き続けるには、曇りのない目で足元を点検し、身を切る覚悟で「聖域なき構造改革」に踏み出す以外に道はないのです。

 私は昨年の年頭メッセージで、消費税増税を乗り切るための「フェーズ1」、2020年ごろまでの中期戦略を描く「フェーズ2」、そしてテクノロジー革命が新聞の姿を根底から変えるであろう、さらに先の時代「フェーズ3」の三つの段階に分けて、挑戦を続ける考えを示しました。構造改革はその挑戦のために不可欠なインフラ整備にほかなりません。昨年11月、社内に構造改革推進本部を発足させました。そのもとに、販売、編集、未来メディアなど六つの専門委員会を置いてゼロベースで議論を進めます。すでに手をつけた改革課題もあり、6月ごろには全体像が見えてくるはずです。その構造改革の方向について、かいつまんでご説明いたしましょう。

 まずは、販売部門です。4月からの消費税増税への対応は、いよいよ本番を迎えます。販売については消費税対策と構造改革を一体のものとして進め、今月から、全国のASAの専売店を対象に空前の規模、「異次元」の特別支援を行います。消費税増税は値上げではありません。ライバル各社の動向を見極めて最終判断いたしますが、本体価格に増税分をそのまま転嫁して、読者のみなさんにご理解をお願いするのが筋だと思います。ただ、それでなくとも新聞離れが続いているところへ消費税アップとなれば、新聞購読をやめる方が増え、部数減少に拍車がかかると覚悟しなければならないでしょう。本社にもASAの経営にも痛手です。しかし、ここが勝負どころ。歯を食いしばって、何としても消費税戦争に勝ち抜かなければなりません。消費税対策を統括する飯田専務のもとですでに準備は整っており、社を挙げて、考えられる限りの販売支援態勢をとります。4月からは、朝夕刊をセットでとっていただいている読者を対象に、朝日新聞デジタルの朝刊の紙面ビューアーに加えて、新開発の夕刊の紙面ビューアーも無料で提供します。ブランド推進本部と連携して、テレビやネット上で新たなCMも流し、ASAをバックアップしてまいります。

 消費税増税はたしかにピンチです。しかし、長年の業界慣行を根底から見直し、「次世代型の販売」への転換をめざして構造改革に踏み出すには、またとないチャンスでもあります。若い優れた人材をASAの従業員に迎え、購買部数増に結びつく営業力を強化するには、厳しさが増しているお店の経営基盤を持続的に安定させることが欠かせません。いわゆる予備紙の問題を放置しての構造改革などありえません。2017年度までをめどに、まず朝刊420万部を抱える主戦場の東京本社管内のお店から順次、予備紙の整理を進めてもらい、経営改善を促します。「競争地域」と「協調地域」のエリア戦略に沿って、販売店の規模の適正化も加速させます。こうした施策がどこまで具体的な成果に結びついているか、地域や店ごとのシェア目標を定め、改革の進み具合を追跡して、細見販売担当から私に定期的に報告してもらいます。ASAの顧客情報を本社と共有する顧客データベースの構築にもただちに着手します。戸別配達網をフルに生かして顧客の志向やニーズを探るきめ細かな販売手法の開拓が、これからの新商品の投入など、次のビジネス展開のカギを握ると考えるからです。

 言うまでもなく、本社とASAは一心同体です。そうであるなら、ASAにも本社の構造改革と呼吸を合わせて改革に乗り出す気構えを持っていただきたい。部数の目減りにも危機感が乏しく、戦う意欲がうかがえないようなASAには、市場から退場していただくことになるでしょう。

 編集とデジタル部門では、「読者第一、ユーザー第一」を掲げた改革に乗り出します。創刊記念日の今月25日組み朝刊から、紙面改革を実施します。販売戦略とも連動し、コア読者であるシニア層、子育て世代の主婦層、地域では首都圏に照準を定めた、親しみやすく役に立つくらし情報を満載した新紙面をお届けします。なかでも力を入れていくのは、新年からの紙面でもご覧のとおり教育です。夕刊と朝刊は別媒体という考えに立ち、「帳合主義」は捨てます。夕刊は朝刊とは別の編集体制をとるよう今年から検討に着手します。

 取材の第一線への要員展開をなるべく手厚くし、本社のデスクワークの合理化などジョブフローも見直します。また、新年度から、地方総局での新人教育を「拠点プラス1総局」などの形で、期間を平均で1年間短縮します。一方で、中堅・ベテランの地方勤務を明確に制度化するなど、記者のライフスタイルの再設計にとりかかります。取材と発信のデジタル化をさらに進め、若手記者全員を対象にソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)や動画のデジタル研修を行います。

 要員が減り、かつ高齢化するなかで、高水準のプロフェッショナリズムを維持するためには工夫が必要です。一群の専門記者集団を擁する編集プロダクションとして「朝日メディアコンテンツ社」(仮称)を設立し、社外のすぐれた人材を機動的に活用する体制づくりをめざします。シニア雇用、短時間勤務者の職域としての活用も視野に入ってくることでしょう。どういう形でそれが可能か、夏までに検討を進めるよう吉田編集担当に指示したところです。「自前主義」からの決別は、新聞印刷の他社工場への委託など製作部門では実現しています。製作や編集に限らず、他部門でも外部の人材活用を幅広く検討していく時期にきていると考えております。

 あの「3・11」からまもなく3年。それを機に、福島総局を「原発取材センター」と位置づけ、復興取材センターである仙台総局と並ぶ二眼レフの取材体制を取ります。専門の編集委員を福島に常駐させるなど、東電福島第一原発事故を粘り強く問い続ける朝日新聞の姿勢を鮮明にいたします。新しい福島総局長には現東京社会部長の森北喜久馬君に就任してもらいます。また、今月はトルコのイスタンブールに、春までにはミャンマーのヤンゴンに支局を開設し、変貌するアジアの姿をリアルタイムでお伝えしていきます。

 経営と編集は原則として分離すべきです。しかしながら、本社の要員のほぼ半数を占める編集部門のトップである編集担当は、コンテンツ担当も兼ね、デジタルや、ビジネス関連部門との調整を統括する役割が増えており、経営に大きな責任を負っております。こうした点を考慮し、次の経営体制では取締役として任用いたします。

 「未来メディアプロジェクト」の中核を担うデジタル部門は今年、新段階に歩みを進めます。2011年5月に誕生した朝日新聞デジタルは有料会員数が約12万5千人に達しました。今後、販売部門とタイアップして、まったく新しい発想に立つデジタル販売の新戦略を近々打ち出すことにしています。これに向けて、全国のASAの販売店から先進的なデジタル実験店を指定し、7月から始動させる計画です。日本発の無料通話・メッセージアプリ「LINE」のユーザーが、サービス開始からわずか2年半に世界で3億人に達する時代です。ネット空間がもはや仮想現実ではなく、現実生活そのもの、ととらえる人たちが急増しているのです。新聞になじみの薄い若い世代のデジタル・ネーティブ層に焦点を絞った「ターゲット3」戦略をすでに策定しており、それに沿って、今年はユーザーの多様なニーズにこたえるデジタル新商品の開発、市場投入に踏み出します。そのため、デジタル部門の若手を中核とするチームが既に動き出しています。

 IT大国米国の最新企業情報、メディア動向をいちはやくつかめるかどうか。それが日本のメディアの死命さえ制する時代になってきました。情報収集の拠点として、この春、米西海岸のサンフランシスコにデジタル支局(仮称)を新設します。大西前デジタル担当を派遣しているマサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボとは、引き続き関係強化をはかってまいります。朝日新聞が出資した「ハフィントン・ポスト・ジャパン」はスタートから約8カ月がたち、正味のサイト訪問者であるユニークユーザーの数が昨年12月には当初の月間目標の2倍以上の500万人を超えました。月間のページビューは2千万が視野に入ってきて、収入面も含めて順調に推移をしております。

 失敗を恐れずに新しい商品開発や事業展開をめざすことを狙いに、昨年6月に誕生したメディアラボは、早くもグツグツと釜が煮立ってきました。教育、医療、エンタメ、そして海外展開と、幅広い分野での検討が同時進行しております。ベンチャー企業に出資してSNSの共同開発に乗り出すなど、すでに事業着手したプロジェクトもあります。社内の新事業創出コンテストには、若手社員を中心に予想を大きく上回る180件の応募があり、2月の最終審査を経て、数件を事業化する計画です。3月には東京ミッドタウンで「ウェアラブルテックEXPOイン東京」を開催し、朝日新聞社も実験発信ブースを出展いたします。

 世代や部門の壁を超え、自由な発想で未来の朝日新聞の姿を描く。わたしたちが次の変革の波をつくりだす主役になる。そんなみずみずしい起業家スピリットが社内に育っていくなら、これほど嬉しいことはありません。

 販売とともに本社の収益を担う大黒柱である広告部門は、ブランド推進の原動力でもあります。リーマン・ショック後の広告収入の大幅な落ち込みは下げ止まりましたが、V字回復が望めるには至っておりません。しかしながら、企画事業本部や各テレビ局などと連携したクロスメディア営業はじめ、朝日新聞ならではの独創性豊かなクリエーティブ力を生かした挑戦と、広告局のみなさんの懸命の働きで、広告総収入では読売新聞をかわしてなお業界の「首座」を保ち続けています。広告グループの再編も今年から本格化し、4月には朝日アドサービスと東朝エージェンシーが合併し、新たに朝日エージェンシーが誕生する予定です。

 新年のキーワードのひとつは、アライアンスです。「メディア朝日グループ」としての結びつきを強めるとともに、社外の企業との提携や関係強化に打って出ます。

 4月から認定放送持ち株会社「テレビ朝日ホールディングス」に移行するテレビ朝日の早河社長との間では、主要人事で関係を強化することでも合意しており、事業開発、動画データをはじめとするコンテンツ開発などのタスクフォースで具体的な協業構想を検討してまいります。また、ANN系列の各テレビ会社には、この春から朝日新聞から選抜した中堅社員を2年程度受け入れてもらうようお願いをしたところであります。北海道では、2018年に、札幌の北海道支社を新しく建つビルに移転させることを決めました。同じビルに入る北海道テレビ放送(HTB)との協業をさらに進めるため、次世代型のメディアミックスを視野に、さまざまな先進的な試みにチャレンジしていきます。

 まもなく紙とデジタル、新聞と電波の境界を超えたコンテンツの大流通時代がやってきます。吹奏楽では昨年、全国大会を初めて動画配信しました。社内やグループが持つリソースの価値をどう再評価し、高度活用していくかはきわめて重要な課題です。知的財産に携わる部門を戦略部門と明確に位置づけ、早急に態勢を整備します。

 デジタル事業と教育事業を融合させたサービスの提供と、技術基盤の開発を狙いに、東証1部上場のインターネットサービス企業で、全国の200近い大学が参加するクラウド型教育支援システム「manaba」を展開する朝日ネットと、新たに資本・業務提携いたしました。また、1895(明治28)年創業の老舗の出版社で、かつて石橋湛山が社長をつとめたリベラルな伝統を継ぐ東洋経済新報社と、新年からデジタルを含めたさまざまな分野で協力関係を深めていくことになりました。特定の企業におもねることのない同社の編集姿勢や、「会社四季報」に代表されるミクロ経済情報には定評があります。信頼できるメディアパートナーとして互いを尊重しつつ、「ブランド価値」を高め合っていければ、と願っています。

 朝日新聞はかつてのネルソン・システムをはじめ、先進的な技術開発で常に新聞業界をリードしてきました。技術こそは朝日新聞の最強のインフラです。未曽有のイノベーションを視野に置く「フェーズ3」に向けて、専門委員会で長期的視点に立った技術の継承と、人材の確保や育成の具体策を練ってまいります。次世代ATOMプロジェクトは、この元日に出稿系システムが新システムに移行しました。1年後にはプロジェクトがすべて完了し、ハイブリッド型メディアの本格展開に向けて技術基盤が整備されることになります。また、新年度から東京本社内に小型のデジタル印刷機を試験導入し、技術的課題を検証するとともに、多品種小ロット印刷に適した商品の受注機会を探ります。

 まことに厳しい時代ですが、これまで述べてきましたように、わたしたちは朝日新聞の未来と次の世代のための投資を惜しみません。吹きつける北風に身を縮めることなく、いまのうちに次々と新しい事業を手がけ、成長のタネをまいておかなくてはならない、と考えるからです。ただ、当然のことながら、経営原資には限りがあります。この20年間、新聞購読料金の値上げはありませんでした。「打ち出の小槌(こづち)」がないのなら、組織をスリム化し、できるだけコスト効率のいい経営をめざさなければなりません。

 本社の2012年度の営業利益は、読売新聞社の3分の1以下ということをご存じでしょうか。仮にこの先もこの傾向が続くとしたら、自由なジャーナリズムを守っていくことが難しくなるばかりか、新しい事業を展開していく上でもライバルに大きく水をあけられかねません。読売新聞との差で目立つのは、年金の負担と総額人件費の違いです。

 年金については、4月から現役社員のみなさんを対象に、確定拠出年金(DC)の導入を含めた年金改革が実施されます。本社OBについては、5. 5%の年金受給者のみなさんに段階的に3. 5%への引き下げをお願いしましたところ、約75%の方から同意を得られ、この2月から利率が引き下げられる見通しです。現役とOB、そして労働組合執行部のみなさんのご理解とご協力にあらためて御礼申し上げます。

 現役世代については2016年春までの給与制度改革が進行中です。しかし、それでも支出の2割近くを占める社員の給与・賞与では、要員数がほぼ同じの読売新聞よりなお60億円ほど多いという現実を直視しないわけにはいきません。かつては一律的だった仕事の内容や社員の働き方も、環境の変化も伴って多様化しつつあります。業界トップレベルの待遇を維持しつつ、人材評価でのメリハリのきいた評価を進めるとともに、「働きに応じた賃金」という考え方を明確に打ち出してまいります。人材評価と給与の指針は公正、透明、そして不平等です。専門委員会で給与制度改革案、新たな評価制度などを徹底して議論していただきます。

 本社の社員の数は現在、約4600人ですが、年々減少に向かい、仮に毎年70人ずつ新規採用するとしても、2025年には3600人強となる見通しです。一方、60歳から65歳までのシニアは最大で500人規模となる試算です。これを前提に収支改善も進めるとなると、社員のみなさん一人ひとりの働き方と意識を、根底から変えていただかなくてはなりません。「選択と集中」、スクラップ・アンド・ビルドの原則を貫き、時代にそぐわなくなった事業、不採算が常態化している部門からは迷うことなく撤退いたします。「あと1年で軌道に乗るから継続を」と申し立ててくる事業があるとしたら、それは1年後でなく、いま、直ちにやめろというサインだと受け止めます。

 ムダを徹底して排除し、収支改善に取り組みます。念のためですが、将来を切り開く可能性のある投資や事業には、当初は赤字であってもリスクをとって踏み出します。ぜひとも、みなさんのご理解をお願いいたします。

 厳しい話が続きました。しかし、現実から目をそらすことなく構造改革を成し遂げられたなら、必ずや明るい未来が開ける、と私は確信しています。本日お話ししていることは、私の所信表明であり、マニフェストです。やると申し上げたことは、やります。必ず実行してまいります。

 さて、結びは希望にあふれる、夢のある話をしましょう。大阪・中之島に誕生したフェスティバルタワーは、トップレベルの耐震、環境性能などが高く評価され、関係者の尽力もあってテナントオフィスはほぼ100%と言っていい入居率となりました。同じ地上200メートルの高さで西隣に建設予定の新ビルは今年6月に起工式を迎えます。最上層部には最高級ラグジュアリーホテルの進出がほぼ固まり、春にはホテルを含めた全体計画を公表できる見通しです。

 現在の全国高等学校野球選手権大会の前身の全国中等学校優勝野球大会は、1915(大正4)年に大阪の旧豊中グラウンドで始まりました。来年はそれから100年。戦争中に中断した甲子園大会も2018年には記念の100回大会を迎えます。いついつまでも甲子園大会が多くの人に愛され、持続的な大会運営ができるための長期プログラム「甲子園200年構想」の検討を今年、本格化させます。

 文化事業では、今年も見ごたえのある催しが続きます。春には修復が進む奈良・明日香村のキトラ古墳壁画が東京国立博物館で公開されます。夏にはニューヨークのメトロポリタン美術館所蔵の古代エジプト展や、NASAとJAXAの全面協力を受けてアポロ時代から「はやぶさ」まで宇宙の最新研究成果を紹介する「宇宙博」なども予定され、多くのみなさんが会場を訪れてくださることでしょう。

 2020年には東京にオリンピック・パラリンピックがやってきます。国威発揚の場に終わらせるのではなく、子供たちの夢をはぐくむ舞台、そして日本とアジアの友好を深める場として、世界最大のスポーツの祭典をどう盛り上げていくか。ブランド推進本部を中心に、朝日新聞らしいメッセージを積極的に発信していきたいと考えています。

 わたしたちの前には大海原が広がっています。行く手に何が待ち受けるやら、目指す港がどこやら、それを示す海図はありません。それでも、わたしたちは持てる力と知恵を結集し、波をかきわけて荒海に漕ぎ出すほかないのです。「難関が次から次へとやってくるからおもしろいのだ」とは講道館柔道の創始者、嘉納治五郎の言葉です。構造改革元年。未来を信じ、勇気をふるって難関に挑もうではありませんか。私もその改革の先頭に立つ覚悟です。

 最後になりましたが、村山美知子、上野尚一両社主のご健勝を心からお祈りいたします。朝日新聞社の社員、OB、グループ企業のみなさんとそのご家族、そして全国のASAのみなさんにとって、今年が健やかで幸多い年となりますようお祈りして、年頭のメッセージといたします。

工藤グループ
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