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 臨時国会が29日召集され、安倍晋三首相が午後に衆参両院の本会議で所信表明演説を行う。首相は来春の統一地方選をにらんで「地方創生国会」と位置づけ、「地方の個性を活(い)かす」ことや「女性の活躍」を強調する。一方、消費税率の10%への引き上げや集団的自衛権を含む安全保障政策については、踏み込んだ言及は避ける。

 首相は所信表明演説で、鳥取・大山(だいせん)の地ビールや島根県海士町(あまちょう)のさざえカレーといった地域産業の成功例を挙げ、「やれば、できる」と強調。「大きな都市をまねるのではなく、個性を最大限にいかしていく発想の転換が必要だ」と述べ、地方に創意工夫を呼びかける。

 そのうえで、人口減少や超高齢化など、地方が直面する問題を解決するため、「まち・ひと・しごと創生本部」を設け、若者が新しい事業に挑戦しやすい環境を整えると訴える。

 「女性が輝く社会」を目指し、待機児童ゼロに向けた取り組みが進んでいることも示す。「真に変革すべきは社会の意識そのものだ」として、上場企業に女性役員数の公開を義務付ける方針を表明する。

 一方、安倍首相は11月30日までの会期の後、消費税を8%から10%に引き上げるかどうかの判断を行う見通しで、所信表明では「消費税率引き上げや燃料価格の高騰などによる景気への影響にも、慎重に目配りする」と述べるにとどめる。

 集団的自衛権の行使容認をめぐっても、首相は閣議決定を先の通常国会後に行ったため、国会での審議は深まっていない。だが、所信表明では「切れ目のない安全保障法制の整備に向けた準備を進める」と簡単に触れ、集団的自衛権の行使容認については直接は言及しない。

 臨時国会には約30本の法案が提出される予定だ。首相が成長戦略の柱に掲げ、通常国会から継続審議になっているカジノ解禁法案も本格的に審議される見通しだ。(今村尚徳)

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◆安倍首相の所信表明演説の要旨は次の通り

 ■災害に強い国づくり

 土砂災害警戒区域の指定や国民への情報提供が、より万全な体制で行えるよう制度の見直しを進める。国土強靱(きょうじん)化を更に進める。

 ■復興の加速化

 除染を加速し、福島の再生を成し遂げる。農地の集積、多角化、6次産業化によって農業者の所得を増やす。2020年のオリンピック・パラリンピックは「復興五輪」としたい。

 ■地方創生

 ふるさと納税など「ふるさと名物」を全国区の人気商品へと押し上げる支援を更に強化する。

 若者にとって魅力ある町づくり、人づくり、仕事づくりを進める。「まち・ひと・しごと創生本部」を創設し、大胆な政策を実行していく。

 ■地球儀を俯瞰(ふかん)する外交

 TPP交渉やEU、東アジアとのEPA交渉など経済連携を戦略的に進める。切れ目のない安全保障法制の整備に向け準備を進める。日中首脳会談を早期に実現する。北朝鮮の拉致に関する調査が全ての拉致被害者の帰国につながるよう全力を尽くす。

 ■成長戦略の実行

 「女性が輝く社会」を目指す。真に変革すべきは社会の意識そのもの。国、地方、企業などが一体となって、女性が活躍しやすい社会を目指す。

 安全性が確認された原発は再稼働を進める。国家戦略特区制度の更なる拡充を提案していく。

 景気回復の実感を全国津々浦々に届けることが大きな使命。「経済最優先」で政権運営に当たる。

 ■おわりに

 「日本はもう成長できない」といった悲観的意見がある。しかし、地方の個性をいかす。女性の活躍の舞台を用意する。まだまだ成長できる。