ベトナムのオンラインショッピングは現金払いが90％
今回はベトナムのＥコマース事情及び「ベトナムのアマゾン」と言われるベンチャー企業について紹介します。ベトナムのＥコマース市場は、0.23兆円程度。日本の15.9兆円と比べると1.5％程度とまだ非常に小規模です。一方、一人当たりの購買金額は$120USD（12,500円程度）と高く、一部のユーザーが集中してＥコマースを利用しているような状態です。今後Ｅコマースは毎年倍々に市場規模は大きくなると予想されており、急速に拡大していくと言われています。
ベトナムのＥコマースで特徴的なのは支払方法です。ベトナムは現金至上主義で、クレジットカードの普及率は数パーセントと遅れています。Ｅコマースの決済で主流を占めるのは「Cash on delivery」という現金払いで、後述の「tiki」でも、未だに現金での支払が90％を占めるとのことでした。（ちなみに100円＝２万ドン程度と通貨の単位が大きいため、10万円程度の支払になると数千万ドンの支払になり、外国人にとっては通貨感覚が非常に怪しくなったりします。）
また、もう一つの特長はオンラインショッピングの女性の利用率が高い点。おおよそ60％が女性です。主要なカテゴリーも化粧品やファッション関連が主流を占めます。ファッション関係の小売の進出が遅れていることや、働いていてお金に多少余裕があるが時間のない女性層などの購買が牽引しています。またスマホが爆発的に売れていますが、Ｅコマースに関してはスマホからの売上は15％前後で推移しているようで、日本と同じくらいですね。
※ベトナムのＥコマースカテゴリー別売上
ベトナムのアマゾン TIKI
TIKI.VN（TIKI）は住友商事やサイバーエージェントベンチャーズから出資を受けているＥコマース企業です。書籍のオンライン販売から2010年にスタートして、現在ではベトナム２位のＥコマースサイトを運営しています（現在アクセス数で言うと、日本のとzozotownと同程度です）。創業者のSon Ngoc Thai Tranはオーストラリアの大学を卒業して、Ｅコマース企業等で勤務した後、2010年に手持ちの$5,000でTIKIを立ち上げました。
最初は手持ちのお金で amazon.com から数百冊の洋書を購入し、自分でサイトをデザインすることからスタート。それが４年後の現在はベトナム有数のＥコマース企業に成長を遂げています。当初は本の販売だけだったのですが、現在はIT製品や化粧品・ファッション関連など商品の幅を大きく広げています。
Sonの成長の鍵は「顧客の声を聞くこと」。顧客の意見に耳を傾けてそれを素早く実行することを心がけているとのことで、名刺の肩書きも「Cusotmer Experience Officer」にしています。実際、洋書中心のラインアップをベトナムのローカル本中心に変えて大きく売り上げを伸ばしたのも、Kindleをベトナムで最初に販売したのも顧客の意見がきっかけになっているそうです。
現在売上を毎年倍増させ、150名以上のスタッフを抱える Son ですが、マネージメントのポリシーもまた「スタッフの意見を聞くこと」。色々ベトナムの起業家の話を聞いていますが「ボトムアップ」という言葉を聞いたのは彼がはじめてです。TIKIのスタッフは平均24歳！と若くボトムアップのスタイルは大変なことも多そうですが、データを重視することでスタッフの育成と成長を両立させているようです。そんなSonの目標は海外展開。数年後にはTIKIを２〜３カ国で展開をさせたいとのこと。他のベトナム人起業家に違わず、Sonもまた周りを取り込むエネルギーに溢れた人物です。
最近イオンが進出して大きな話題になっていますが、ベトナムはまだ独立系の小売店が多く、買い物し易い環境とは決して言えません。Ｅコマースについても「商品の質が不安」というのが一番大きな不満点で、まだEコマースについて懐疑的な人が多いのが実情です。一方で独立系小売店が多い事、国民のITリテラシーが高く、スマホ普及率も急速に増えている事などから、小売店をまとめる楽天のような存在が出てくると数年後にはベトナムも購買の仕方が大きく変わっていくのではないか、等と感じています。
＜出典＞
VECITA VN E-commerce report
http://www.vecita.gov.vn/default.aspx?page=document&do=detail&field=24&id=288
（株）ＭＭ総研
http://www.m2ri.jp/newsreleases/main.php?id=010120140129500
| 【著者】
黒川賢吾／株式会社Asia Plus／Founder/CEO
横浜国立大学卒業後、日本電信電話株式会社に就職。2000年よりメキシコにボクシング修行に出るために退社。帰国後、外資系ソフトウェア勤務を経て2002年にソニー株式会社入社し、英国・米国・シンガポールにて海外マーケティングを担当。株式会社ユニクロを経て、2014年１月に株式会社Asia Plus を設立。ベトナムをベースに企業向けSNS「Tascade」とオンラインリサーチサービス「Q&Me」を展開。
株式会社Asia Plus http://asia-plus.net/
Tascade http://www.tascade.net
Q&Me http://qandme.net |
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