アップルが9月に開催したメディア向けイベントで注目を集めたのはもちろん、新しいiPhone6/6 Plusと開発が噂されていたApple Watchの発表でした。しかし、キーノートで発表されたモバイル決済サービスのApple Payは、iPhone6/6 PlusだけでなくApple Watchの今後の人気にも影響を与えることになると思われます。
新しく発表されたApple Payは向上したセキュリティ機能とその使いやすさで確かに大きな出来事ではあるのですが、これはアメリカでの話でヨーロッパを始めとする他の国ではそれほど注目されていないようです。
ヨーロッパでは既にICチップ搭載のカード、PIN入力
クレジットカードやデビットカードで支払いをする場合、アメリカでは磁気式のストライプをスワイプしてサインをするのが主流であるのに対し、ヨーロッパでは既にカードにICチップが搭載されており、PINコード(暗証番号)を入力することで決済が認証されるようになっています。この方式は20年前にフランスで導入され、他のヨーロッパ諸国にも広がり、既に10年以上利用されています。このためヨーロッパでのクレジットカードによる詐欺や不正使用などの割合は低く抑えられていますが、アメリカの場合にはその対策に2013年に53億ドル(約5,792億円)の費用がかかっているといわれています。
クレジットカードの不正使用で最も多いのが、他人がなりすましてカードを利用し嘘の署名をする場合と、レストランや店舗のスタッフが購入していない余分な決済を行う場合なのですが、ヨーロッパの場合には自分で機器にカードをスワイプしPINコードを入力するのが普通です。レストランでは会計の時にスタッフがモバイルの決済端末をテーブルまで持ってきてくれます。つまり、ヨーロッパの場合にはクレジットカードを決済のために他人に渡すことがないということです。もちろん、これでヨーロッパでクレジットカードの不正使用や詐欺がなくなったと言っているわけではありませんが、少なくなったのは事実だと思います。
Apple Payは今回のヨーロッパでのICチップを搭載したクレジットカードとPINコードを入力する決済と似ています。Apple Payの場合はICチップはiPhoneの中にあり、PINコードの入力、いわゆる本人確認はTouch IDです。決済手数料は標準的な金額だとすると、近い将来にはかなりの店舗に普及すると思われますし、既にApple Payと提携したアメリカのチェーンは多いと報道されています。
ヨーロッパではカード所有枚数が少ない
アップルは自社のウェブサイトでApple Payはユーザーが財布から利用するカードを選ぶ手間を省き、時間を節約できると説明していますが、これもクレジットカードの所有枚数が多いアメリカならではの話です。ヨーロッパでは平均で1人当り1.46枚のカードを所有しています。この内の3分の2以上はデビットカードです。一方、アメリカではヨーロッパの2倍以上のクレジットカードを所有しており、2007年の調査ではアメリカ人の14%は10枚以上のカードを持っているとの結果も公表されています。アメリカに比べればヨーロッパではクレジットカードは少ないのが現状です。
Apple Payのセキュリティは強固
Apple Payのセキュリティに関しては非常に優れており、バックエンドで使用されている技術は非常に複雑ですが信頼できます。iCloudのセキュリティとは違うものと考えられます。近い将来には、このような技術がヨーロッパや他の国の銀行が興味を持つことははっきりしています。しかし、既に同様のシステムを検討しているいくつかの企業もあり、アップルはこれらの企業と競合することになります。
使い勝手の良い2要素認証
注目するのがApple Payのネット上での決済です。既にVISAはVerified Visa、MasterCardはSecureCodeなどの2要素認証を採用していますが、アップルが採用した2要素認証の方式はより強固で、使い勝手も比較にならないくらい良いです。
さらにApple Payが来年に発売されるApple Watchで利用できるようになれば素早い決済が可能で、さらに使い勝手が向上します。しかし、アップルがいうほど節約できる時間はそんなに多くはないかもしれません。iPhoneのバッテリーが切れたら使えませんし、店舗の機器が故障していたら使えませんし、結局プラスチック製のカードは持っていかなければならないと思います。当分の間はそんなに多くの人がApple Payを使うことにはならないのではと思います。
参照元 : Macworld
執 筆 : リンゴバックス