紅葉を楽しむ、楽しい登山が暗転し、30人以上の登山者が心肺停止状態で発見された。うち4人の死亡が確認された。

 長野・岐阜県境の御嶽山(おんたけさん)の噴火は、多くの被災者を出す惨事になった。身を隠す場所が限られる山頂付近で、噴石に直撃されたのだろうか。

 今回、噴火するまで御嶽山の警戒レベルは、5段階で最低の「レベル1」(平常)だった。

 気象庁は噴火を予知することは困難だったとしている。火山性の地震が今月になって増えたが、ほかに異常がなく地震も落ち着いていた。地震の続発は、地元自治体に伝えてもいた。

 もし地震が増えた段階で、火口周辺への立ち入りを規制する「レベル2」に警戒レベルを引き上げていたら、あるいは立ち入り自粛を呼びかけていたら、被害を減らすことができただろうか。検証が必要だろう。

 自己責任にゆだねられる部分が多い登山で、こうした警戒情報をどのように伝え、万が一の事態にどう備えるのか。それぞれの火山で、地元自治体は気象庁や登山愛好者らと相談してみてはどうだろう。

 火山噴火予知連絡会の拡大幹事会はきのう見解をまとめた。今回の噴火は、地下水がマグマで熱せられて起きた水蒸気爆発で、火砕流を伴った。今後も同程度の噴火や火砕流の発生に警戒が必要と呼びかけている。

 国内の噴火で犠牲者が出たのは、1991年の長崎県の雲仙・普賢岳以来だ。110もの活火山がある日本だが、全体としては静穏な歳月が続いてきた。

 火山噴火は比較的低いリスクと見なされ、他の災害に比べ対策が遅れている。火山予知連が監視強化を求め、気象庁が常時監視する47火山でさえ、必ずしも観測体制は充実していない。

 地震よりまれにしか起きず、直接的で実証的な研究が進みにくい難しさもある。大学など研究現場で実用的な成果を短期間で求める風潮が強まるなか、火山研究者は減少の一途だ。

 このままでいいはずはない。

 300年前の1707年に起きた富士山の宝永大噴火は、噴火規模を0~8で示す火山爆発指数で5相当と考えられているが、横浜で10センチ、江戸で5センチもの火山灰が降り積もった。

 現代なら電子機器や交通網、上下水道など、都市機能は壊滅的な打撃を受けるだろう。

 世界有数の火山国である以上、政府は火山のリスクを軽視していてはならない。

 火山の観測や研究を強化するとともに、噴火被害の軽減策を着実に図るべきである。