世界で最も注目されるベンチャー経営者、イーロン・マスク氏。EV(電気自動車)のテスラ・モーターズと宇宙ベンチャーのスペースXを率い、巨大企業が君臨する産業を揺さぶっている。日経ビジネスは9月29日号で「イーロン・マスク テスラの先にある野望」という22ページの特集を掲載した。同特集に合わせて、日経ビジネスオンラインで連動記事を掲載する。第1回はマスク氏のインタビューをお届けする。(聞き手は本誌編集長、田村 俊一)
1971年6月、南アフリカ共和国生まれ。95年、米ペンシルベニア大学で経済学と物理学の学位を取得後、米スタンフォード大学大学院に進学するも中退。99年、インターネット決済のペイパルの前身企業を創業。2002年、宇宙輸送ベンチャーのスペースXを起業し、同社CEO(最高経営責任者)。2004年、創業期のテスラ・モーターズに出資して、2008年から同社CEOも兼任。映画「アイアンマン」の主人公のモデルとしても知られる。(写真:的野 弘路)
自動車や宇宙ロケットなど歴史ある大企業が支配する市場に独創的な技術で挑んでいます。産業を根底から変えたいという強い意欲を感じます。
マスク:EV(電気自動車)の「モデルS」の狙いは、革命的な製品となることです。私たちは人々のEVに対する認識を抜本的に変えたい。EVには、スピードが遅く、見栄えは良くなくて、航続距離は短く、性能も低いというイメージがありました。こうした常識をことごとく破壊して、EVは世界最高のクルマであることを見せつけたい。
私たちは、それを実現するために必死に努力してきました。操縦性、美しさ、長い航続距離、高速充電、先進的なIT(情報技術)を使い、最高のクルマを実現しました。
今はガソリン車など内燃機関のクルマが主役で、ハイブリッド車も普及しつつあります。こうした車を押しのけてEVが主役になる時代が来るのでしょうか。
マスク:世界で1年間におよそ1億台のクルマが生産されています。EVが市場シェアの5割を占める時代が来るのは、はるか先でしょう。それでも私は今後15年以内に、EVが5000万台に達する日が来ると信じています。
テスラ・モーターズの今年の生産台数は3万5000台で、来年は6万〜7万台になる見込みです。世界の新車市場に占める比率はとても小さい。
それでもテスラは自動車産業に巨大なインパクトを与えようとしています。「消費者はEVを好む」という現実を自動車大手に見せつけたい。私たちは自動車各社がもっとEVへ投資するように背中を押そうとしているのです。
世界が持続可能な輸送手段を持つためには、自動車大手を説得して、EVにシフトさせる必要があります。消費者がテスラのクルマをどんどん買うようになれば、自動車大手もEVが進むべき道だと納得するはずです。
私たちは、テスラのEVを早い時期に購入してくれたユーザーに感謝しています。なぜなら彼らは、EVという考え方を社会に広めるうえで極めて重要な役割を果たしているからです。こうした顧客の存在なしには、テスラもEVも成功できません。