イノベーションの成功確率を高める
「8つの問い」
イノベーションに対する取り組みは、一見着々と進んでいるように見えても、実際に訴求力のある製品・サービスを生み出し事業として軌道に乗せるまでの間には、さまざまな落とし穴がある。以下の「8つの問い」は、事業化への道を見失わないための強力な味方となるはずだ。
私がまだマッキンゼー・アンド・カンパニーで駆け出しの新人だった頃に、プロジェクトマネジャーだったリンダ・ブッシュから受けたアドバイスはいまでも心に残っている。「たくさんの質問をしなさい。迷惑をかけると思うかもしれないけど、何かを学ぶには質問するしかないわよ」
よい問いかけに勝るものはない。ブッシュの忠告を胸に、当時の私は技術的な知識(エクセルのピボットテーブルを使いこなす方法)、企業社会でのありふれた現象(不可解な経費明細書)、職業上の細かいニュアンス(「あの発言にはどういう意図があったのですか?」)などについて学んでいった。実際、ハル・グレガーセンとジェフリー・ダイアーの研究によれば、成功するイノベーターに共通する行動として、質問を投げかけることが挙げられている(本誌2010年4月号「イノベーターのDNA」で詳述)。
そこで、私も皆さんに問いかけたい。イノベーションの成功確率を高めるには、どんな問いが必要だろうか? すでに有名なフレーズがいくつかある。ピーター・ドラッカーの問いは「現在の方法を用いていなかったとして、白紙から始めるとしたら同じ方法を取るだろうか?」。セオドア・レビットの不朽の名言もある。「実際のところ、我々は何の事業を行なっているのだろうか?」。そしてアンディ・グローブは、インテルを変革するためにゴードン・ムーアにこう問いかけた。「もしも取締役会が我々を追い出して、新しいCEOを連れてきたとしたら、その人はまず何をすると思う?」(ムーアの返事は「メモリー事業をやめるだろうね」)
こうした名言に加えて、ここで掲げる8つの問いを検討してほしい。新たな成長機会を見つけ、破壊的変化の脅威を特定し、訴求力のある製品やサービスを生み出し、事業アイデアを結実させる――イノベーションにおけるこれら一連のプロセスを明確にするうえで、以下の問いが役立つはずだ。
- 第59回 イノベーションの成功確率を高める 「8つの問い」 (2014.09.29)
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- 第56回 イノベーションは2050年の世界を どう変えているだろうか? (2014.08.01)
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