御嶽山噴火:山小屋で耐えた夜…無事下山、涙で抱き合い
毎日新聞 2014年09月28日 22時20分(最終更新 09月29日 01時04分)
岐阜県下呂市小坂町の小坂口登山口には28日、火山灰で汚れたヘルメット姿の登山者が次々に姿を見せた。小坂口は気象庁が27日に設定した半径4キロの入山規制の外側だ。御嶽山で一夜を過ごした登山者26人が同日正午までに下山し、医師の診断や警察の簡単な事情聴取を受けた後、バスなどに乗り込んだ。岐阜側では救出活動が完了した。
県警によると、男女2人が重傷で、このうち女性は8合目付近からヘリコプターで病院に運ばれた。打撲や、やけどなどの軽傷は8人。医療チーム「DMAT」の浮田雅人隊長(51)は「皆さんは疲れ果てている。九死に一生を得た人もいるようだ」と話した。
岐阜県警山岳警備隊とDMAT隊員ら25人は28日午前4時半、救助に出発した。合流した登山者たちは、午前9時15分ごろから相次いで登山口にたどり着いた。下山した女性の一人は報道陣に「小屋の方のおかげで安心して過ごすことができました」と話した。出迎えた知人と涙を流して抱き合う男性もいた。
長野県側の山小屋「二の池新館」支配人、瀬戸エイコさん(63)は噴火当時、下山中だった。山小屋のアルバイト3人を心配し、登山口で待った。3人が無事に姿を見せると、瀬戸さんは抱き合って喜んだ。山小屋は噴石で屋根が壊れるなどの被害が出ているという。
多くの登山者が避難した山小屋「五の池小屋」のスタッフ5人も午後2時10分ごろ下山した。管理人の市川典司さん(44)によると、小屋では登山者とスタッフら計35人が広間で雑魚寝するなどして一夜を過ごしたという。小屋は火口から離れた場所にあるため、登山者たちの動揺は少なく落ち着いていた。避難者の中には肩を負傷して血を流す女性もおり、市川さんらが励ましながら止血したという。
長野県松本市の50代男性会社員の家族の元には28日夕、「(男性は)ヘリで救助された」と自治体関係者から連絡があった。男性と電話で言葉を交わしたという長女(14)は「父は『大丈夫だ。けがは大したことない』と言っていた。いつもと変わらない様子で、ほっとした」と話した。【宮田正和、岡大介、加藤沙波、井上知大、道永竜命、山本将克】