(2014年9月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ベネズエラはデフォルト(債務不履行)の瀬戸際に立っているかもしれない。アルゼンチン経済はダウン寸前だ。そして、汚職と景気後退入りした経済にうんざりしたブラジル国民は、間もなく野党の候補を大統領に選ぶかもしれない。
これらの国の共通点は何か? これから起きることの予兆である。南米の最も脆弱な経済国として、3カ国の現状は10年にわたる南米の好況期が終わりに近づいていることを示す明白な兆候だ。これは恐らく地域に重要な政治的変化も強いることになるだろう。
コモディティー景気と「ピンクの潮流」
ベネズエラ大統領だった故ウゴ・チャベス氏(左)とブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ前大統領〔AFPBB News〕
10年前、中国が原動力となったコモディティー(商品)価格高騰が「ピンクの潮流(左派の台頭)」と重なった。
社会主義者のウゴ・チャベスがベネズエラ大統領で、アルゼンチンにはネストル・キルチネルとクリスティナ・フェルナンデスの夫婦コンビがおり、ブラジルにはカリスマ的なルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバがいた。
実質賃金が上昇し、雇用も拡大した。一方、大好況とともに中間層が拡大し、大陸全土で格差が縮小した。好況期は永遠に終わらないように見えた。時の政権にとっても、良い時代が続くように思えた。
ベネズエラのボリバル革命は16年間にわたり政権を握っている。フェルナンデス大統領の連立政権は12年、ルラ・ダシルバ氏の労働党も12年政権の座にある。しかし、これほど長く政権を握っている政府はどれも、時勢に疎くなる恐れがある。
経済状況が変わっている時には、特にそうだ。中国経済は冷え込みつつあり、コモディティー価格が下落している。これで経常赤字拡大などの脆弱性が露呈する。一方、米国の金利上昇はこうした赤字を穴埋めするのを困難にする。さらに、拡大した中間層は、長く続いた消費者信用の急拡大の後で弱っている。
ブラジル大統領選が象徴する新たな政治トレンド
現在最も脆くない国は、投資を優先した国だ。例えば、ペルーとコロンビアは国内総生産(GDP)比28%というアジア並みのペースで投資を行っている。
これに対して最も脆弱な国は、ベネズエラやアルゼンチンなど、好況への対処を誤り、今になって衝撃的な政治的変化に直面している国々だ。10月5日に有権者が投票所に向かうブラジルが、この状況を浮き彫りにしている。