路線長250km(軌間1435mm、停留所数1763)、24のルートを持つYarra Trams。無料エリア実施は2015年1月1日からと発表。運賃ゼロの範囲には、球場や港が整備された湾岸エリアのDocklands、南半球最大の市場といわれるQueen Victoria Market、メルボルン最大のターミナルであるSouthern Cross Station、エドワード王朝様式のFlinders Street Stationなどが含まれる。
9月中旬、冬のFlinders Street Station。その北側にあるメルボルン中心街から電車に乗ってみた。観光客やビジネスマンなどでにぎわうCollins Streetに立つ。Yarra Tramsのカラフルな電車が道路の中央を行き交っている。
Yarra Tramsの車両は9形式。A-Class(1両、Comeng製)、B-Class(2両、Comeng製)、C-Class(3両、Alstom製)、C2-Class(5両、Alstom製)、D-Class(3両、Siemens製)、D2-Class(5両、Siemens製)、E-Class(5両、Bombardier Transportation製)、W-Class(Melbourne & MTB製)、Z-Class(1両、Comeng製)。1950年代生まれの“W”と、2000年代の“D2”や“E”が同じレールの上を走っている。
まず、日本の「Suica」と同じように、電子マネーカード「myki」にチャージ。自分が乗りたい電車がやってきたら手を上げる。電車のドア付近にある受信機にカードをタッチ。すると電車はクラクションを鳴らし、走り始める。電車から降りるときが興味深い。座席上に張られている紐を引っぱって、乗務員に「次の駅で降ります」と伝えるのだ。
朝市を見に、Prahran Market駅で下車。色とりどりの野菜や魚、牛肉やラム肉などが並ぶ市場内を歩く。Market Lane Coffeeでひと休みし、「Flat White」と呼ばれるコーヒーを片手に大通りを歩いてみる。
道の中央にYarra Tramsが走り、その両脇に自動車用道路が敷かれている。Yarra Tramsのほとんどが併用軌道で、専用軌道の区間はわずか。メルボルン動物園やロイヤルパークのそばに敷かれた専用軌道区間は、ひと気のない静かな森を電車が走っている。
Victoria Streetなどの大きな道になると、これに自転車用道路が加わる。歩行者、自転車、プラットホーム、自動車、Yarra Tramsと、それぞれレーンがある。プラットホームに立っていると思っていたその場所が、実は自転車用道路で、危ない思いをしたときもあった。
また、大きな交差点で見かけた光景に驚いた。右ウィンカーを灯したクルマが、最も左の車線に入る。「メルボルン名物」と言われるフックターン(Hook Turn)だ。メルボルンでは、電車とクルマの接触事故を防ぐため、右折車に2段階右折を指示する交差点があるのだ。
Yarra Tramsでは、新旧さまざまな車両が駆けているほか、無料循環ルート「City Circle Tram」や、レストラン電車「Colonial Tramcar Restaurant」なども走る。そんなYarra Trams が、2015年、市内中心部や湾岸エリアの運賃を無料にする。
夕方、レーンウェイ(Laneway)と呼ばれる路地裏を歩く。小さなバーでビクトリアビター (Victoria Bitter)を注文。フットボール好きの中年男性二人が話しかけてきた。
「どのチームを応援してるんだ? 日本人はどんなビールを呑むんだ? Victoria Bitterはうまいか? Eureka Towerには行ったか? 観覧車(Melbourne Star Observation Wheel)もいいぞ! 日本ではどんなクルマが流行ってるんだ?」