Updated: Tokyo  2014/09/29 01:36  |  New York  2014/09/28 12:36  |  London  2014/09/28 17:36
 

S&P小川氏:必ずしもプラスでない、消費増税-格付けに

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  9月10日(ブルームバーグ):米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)でソブリン格付け担当の小川隆平ディレクターは来年10月に予定されている消費税率10%への引き上げについて、マクロ経済に悪影響を与える可能性があれば、「必ずしもソブリン格付けにプラスではない」と述べた。

小川氏は9日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで「消費増税は結構だが、それで経済に悪影響が及び、結果として消費税率引き上げが中長期的な財政再建にプラスにならない状況になるのであれば、必ずしも消費増税がプラスとはいえない」と語った。

安倍晋三首相は7-9月期の国内総生産(GDP)の結果などを踏まえ、年末にも消費税の再増税を決断する。8日発表の4-6月期GDP改定値が速報値から下方修正され、リーマンショック以来の落ち込みとなった。政府・与党から消費税率再引き上げ先送り論が浮上、市場関係者からは追加の財政支出や金融緩和が必要との声が出ている。

小川氏は「一番大事なのは名目GDP(国内総生産)成長率。これが上がらない限りは税率を引き上げても結果として財政再建にプラスにならない可能性がある」と述べた上で、「消費増税をしなくともマクロの成長率に勢いがあれば、財政問題は先行き明るくなる」と述べた。

消費増税を先送りした場合の国債市場への影響については「多少ボラティリティーが出たり、国債の利回りが上がるかも知れないが、今のペースで日銀が買い続ける限り、需給関係だけで見ればそんなに大きく国債が売られるとは考えにくい」との見通しを示した。

1年先送りも選択肢

内閣官房参与の浜田宏一・米エール大名誉教授は8日、ブルームバーグ・ニュースに対し、消費増税の1年先送りも選択肢だと発言。産経新聞によると、本田悦朗内閣官房参与も日本経済にとって再増税はリスクが大きいとし現時点で挙げるべきではないと述べた。

SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは「7-9月期GDPの回復が弱ければ、日銀の物価2%目標の達成時期が遠のき、政府の消費増税判断も危うくなる」とし、「日銀の追加金融緩和、政府の追加財政出動への期待が一段と高まる公算が大きい」とみている。

消費増税が先送りされると、政府が掲げる来年度の基礎的財政収支の赤字半減目標の達成も困難となるとの見方が多い。これに対し、小川氏は「半減目標が達成できなかったから格下げするとか、見通しを悪くするとかいう単純なものでもない」とし、20年度の黒字化への道筋を明確に示すことができれば「悲観したものではない」と語った。

さらに「財政再建目標をどういう手段でやるかは選択の余地がある。マクロ経済を振興できる政策があれば政府の税収も増える。増税だけが手段ではない。景気浮揚策とどのように組み合わせ、最終的に財政のサスティナビリティ(持続可能性)を達成するかだ」と指摘した。

その上で、「政府が消費増税を実行する可能性は十分あるが、かなり目先の景気に配慮した形での実施でないと、マクロ経済が大変なことになるリスクがある」とし、追加の財政支出や法人実効税率の大幅な引き下げが必要となる可能性があるとの認識を示した。

一方で、金融の追加緩和については「年末から来年にかけて、場合によっては一段の金融緩和もあるかも知れないが、今の段階で相当な流動性供給をやっている。意外感がなく、今頃来たのかというぐらいの反応しかなくアナウンスメント効果は少ない」とみている。

米連邦準備制度理事会(FRB)がテーパリング(量的緩和の縮小)を続ける一方、日銀の量的緩和の継続で円安が進む可能性があるとしながらも、「110-115円の円安になっても必ずしも輸出は増えず、日本経済にプラスになる発想はできない」と述べた。

記事についての記者への問い合わせ先:東京 下土井京子 kshimodoi@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Brett Miller bmiller30@bloomberg.net淡路毅, 上野英治郎

更新日時: 2014/09/10 13:24 JST

 
 
 
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