2010年9月13日
経済的理由などで授業料免除を受ける高校生の比率は、偏差値の高い学校ほど低い傾向にある――。朝日新聞が福島県教育委員会に、情報公開請求した同県の県立高校別の授業料免除実績などから、そんな実態が浮かんだ。教育格差の研究者は「学力が家庭の豊かさの影響を受けている表れで、同様の現象は全国的にみられるはずだ」とみている。
県教委が文書開示した全日制県立高校85校の2008年度の免除実績と、県内の民間教育機関が出している高校別偏差値とを照らし合わせた。
免除制度は県の条例に基づき、休学や留学した生徒や、経済的理由で納付が難しい生徒に対して適用される。08年度は、定時制も含めた全在籍生徒約5万2千人のうち、9.5%の約5千人が免除された。うち約4500人が経済的理由だった。
免除率を高校別に見ると、最低は2.1%、最高は29.6%と、10倍超もの開きがあった。偏差値の高い学校ほど免除率が低い傾向になった=グラフ。両者がどれくらい連動しているかを表す相関係数(1かマイナス1に近いほど強い連動、0に近いほど弱い連動を示す)は、マイナス0.8だった。
免除実績は近年、県全体でみて高まる傾向にある。05年度は7.3%、06年度は7.9%、07年度は8.7%だった。民主党政権は10年度から高校の授業料を無償化したため、今後はこうした免除実績の数値は存在しなくなる。
■一律の無償化、格差を広げる
<教育格差に詳しいお茶の水女子大の耳塚寛明教授の話> 免除率の違いは、子どもの学力が家庭の豊かさの影響を受けていることの表れ。無償化でこうした姿は見えにくくなるが、格差の実態は変わらないはずだ。所得制限のない一律の無償化は経済的に豊かな家庭に余力を与え、むしろ教育格差をさらに広げる可能性がある。格差の実情を踏まえ、経済的に苦しい家庭には別の支援策も考える必要がある。(中川透)
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■全国で11%を減免 09年度、過去最高
文部科学省によると、2009年度に授業料減免を受けた公立高校生は全国で25万2千人。公立高校生227万9千人の11%にあたる。データがある96年度以降では人数も割合も過去最高という。このうち全額を免除されたのが22万2千人で、半額免除や4分の1免除など、一定額を免除された生徒は2万9千人だった。全額もしくは一定額が免除される年収基準は各都道府県によって異なるが、全額免除は年収250万円以下、減額は年収350万円以下の世帯の高校生を対象としている自治体が多いという。