「これはこういう点が良い」とか「悪い」とか「普通」とか、それだけでなく細々と批評的な考えをめぐらしたくなる欲求のことを何と言うのだろうか。
「批評欲」という言葉があってもおかしくはないし、自分がブログを書く動機の大半はそういう欲求によるものではないかと思う。
息もできない
「チンピラと高校生の女の子」という組み合わせだとすぐ恋愛になりそうだが、そうならないところがいい。
暴力と省略、抑えたユーモアという点では北野映画的な感触もあり、音楽がほとんど無いところが良かった。
奇跡を起こしたり、死んだり復活したりメッセージを発したりで、宇宙人とは現代のキリストのようなものかと思ってしまった。
再見。「女性がただの一人も出てこない映画」だと今更ながら気づいたよ!
裏窓
特に前半、流れ続ける音楽。
グレース・ケリーのファッションショー。
ミス・ロンリーハートの筋と作曲家の筋がより合わさる絶妙さ。
映画を観るように他人の生活を眺める主人公にとって、まるで映画から人間が出てきたかのようなクライマックスの恐怖。
そして、山岡久乃のような家政婦のおばさん。
70年代のパートが良かった。
久々にいつまでも観ていたいと思わせる映画だったよ!
ブカツ道
茶道部はショートフィルムらしいキリッとした省略、抑制が効いていて良かった。
野球部は×、家庭科部と演劇部はまずまず。
主演の二人が見事だったし、全編に新緑の緑と初夏の雰囲気が溢れているところがいい。
ミッドナイト・ラン
これは非常に面白かった。
地味ながら、小技と捻りと意外性に満ちた脚本が見事。
アメリ
再見。冒頭付近の好きなもの・嫌いなものづくしは「枕草子」風であると気付いた。
最後まで二時間という長さを感じさせないテンポが快調、気持ちの良い映画。
「人と人の心が通じ合う」という、ただそれだけの事が素晴らしく、綿密に描かれている。
「サンセット大通り」「ミザリー」「ホテル・ルワンダ」「ナイロビの蜂」を足したようなサスペンス物の傑作。
ブラックでファニーで箱庭的な世界で、映像は何もかも飴色、チマチマした作り込みとそれを吹き飛ばすようなカタルシスのある見せ場、という訳でバランスの非常によい作品。
古い西部劇のようなドラマで、「学習するゾンビ」「ゾンビをかじると感染する」「馬にかじりつくゾンビ」以外にこれといって見所はなかったよ!
田中裕子にこんなことやあんなことをさせたい!してもらいたい!という願望を、ノスタルジーと捜査を言い訳にして見せてくれる映画だよ!
近頃なぜかチャールストン
微妙な珍品だった。
本気なのか遊びなのか、冗談なのか寓話なのか、ピントがぼやけている感じがする。韓国でリメイクでもすれば、この独特のノリに新たな輝きが加わるかもしれない。
役者たちの顔のアンサンブルが絶妙、劇伴なしの音楽が見事、モノクロにしたのも大正解。
の・ようなもの
もっと観るに耐えない、80年代的な恥ずかしさに満ちた映画かと思っていたら、今でもスンナリ観ることの出来る才気煥発の作品だった。
全体的にドライでアッサリした空気感がいい。
銀嶺の果て
黒澤明脚本、志村&三船コンビのサスペンス。
冒頭のつかみもいいし、中盤の展開もクライマックスも見事。
今回のまとめ
今回は「ラストキング・オブ・スコットランド」「時をかける少女」「の・ようなもの」が個人的に推したいところである。
四十代~それ以上の世代は「時をかける少女」と言えば角川映画の話で持ちきりだが、どういう訳か私は昔からまったく原田知世には魅力を感じることができないので「時をかける少女」と言えば仲里依紗である(アニメ版の声も良かった)。
「の・ようなもの」は伊藤克信の訛りが懐かしいし、全体に洗練されていて退屈しない映画だと思う。
世間一般的には「ミッドナイト・ラン」「アメリ」「裏窓」は名作なので、観ていない人は観ておくべきである。