認可保育所に入れない待機児童は、全国で2万1371人(4月1日時点)。厚生労働省が今月公表した集計数は前年より1370人減ったものの、6年連続で2万人を超えた。

 共働き世帯は近年、増え続けている。育児と仕事を両立させようとすると、直面するのが預け先の問題だ。

 自治体の側も保育所を増やしてきているが、施設を増やせば利用者も増えて、待機はなかなか解消しない。この1年を見ても、全国総計で定員を4万7千人分増やしたところ、利用者もほぼ同数増えた。

 待機児童問題を解消するためには、実態把握が大前提になる。ところが、国の定義にあいまいな部分がある結果、児童の数え方も自治体によってまちまち。「保育所が見つからず、育児休業を延長」「自宅で育児をしながら求職中」といったケースをどう扱うのか、統一基準がない。

 まず、待機児童の定義を一本化して、全体像の把握に努めるべきだ。

 安倍政権は、17年度末までに40万人分の保育の受け皿を増やす方針を打ち出している。保育所など施設の拡充とともに、子どもの世話をする保育士も確保する必要がある。17年度末の必要数は46万人と推計されているが、このままでは7万4千人不足する見通しだ。

 資格を持ちながら保育士として働くことを望まない人に対する厚労省調査(複数回答)では「賃金が希望と合わない」が20~40代を通じて最も多く、30代では「就業時間が希望と合わない」(33%)「子育てとの両立がむずかしい」(26%)が目立った。「自分の子どもが学校に行っている間だけ働きたい」といった希望もあった。

 預ける側、預かる側とも長時間労働を前提とする限り、待機の問題は解決が一層、難しくなる。待機児童問題は「働き方」の問題にもつながっている。

 来年度からの新制度に向け、今は「認可外」の保育について、国の基準を設けて認可する仕組みが動き出す。小規模保育所のほか、保育士らが自分の家などで子どもの世話をする「保育ママ」など、認可された保育サービスが広がる。

 待機児童問題で成果を上げている横浜市では、認可保育所に入れなかった家庭に専門の職員が連絡を入れ、代わりに使える保育施設やサービスの情報を提供し、多くの利用に結びついているという。こうしたきめ細かな対応が、自治体にはいっそう求められる。