御嶽山噴火:突然の衝撃、生きた心地せず
毎日新聞 2014年09月28日 00時24分(最終更新 09月28日 01時02分)
突然のごう音と噴煙が、土曜日の山頂を襲った。長野、岐阜両県をまたぐ御嶽山(おんたけさん)(3067メートル)で起きた大規模な噴火。降り注ぐ噴石と火山灰、たちのぼる煙や熱風が登山者を恐怖に陥れた。「生きた心地がしなかった」「もうだめかと思った」。死傷者は多数に上り、無事に麓(ふもと)にたどりついた人々も表情は青ざめていた。【宮田正和、古川修司、黒川晋史、野口麗子、太田誠一】
「ズドーン」。27日午前、9合目付近にいた岐阜市の会社員、川口直樹さん(37)は背後で響いたごう音に振り向くと、すでに噴煙が迫っていた。避難のため登山道の入り口を目指す。途中で幾度か噴煙に巻き込まれ、大粒の石が降り注いだ。約5分おきに、ごう音が背後で響いた。「煙で目も開けられなかった」。飛んでくる石が体に当たらないよう身を守りながら歩みを進めた。10メートルほど離れた場所に野球ボール大の石が降ってきた。やがて噴煙の色が黒くなり、熱を帯びてきた。「命の危険を感じた」。周りにいた登山客と励まし合って下山した。
長野県の団体職員の男性(56)によると、灰や熱風から逃れるため、山頂の社務所にも登山客が逃げ込んだ。男性は社務所の外で3人ほどが火山灰に埋もれて動けなくなっているのを目撃した。その中には低学年の小学生のような姿もあったという。社務所内では同じく小学校低学年ぐらいの子を連れた男性登山客が、子供の友達の姿が見えないなどと話しているのを聞いた。社務所には、手首を骨折している人もいた。
「生きた心地がしなかった」。新潟市の男性会社員(53)は振り返る。山頂近くの山小屋を出た瞬間、噴煙とともに「ドガン」という大音響が響いた。慌てて山小屋に戻ったが、屋根に石がばらばらと落ち、窓ガラスが割れて屋内に灰がたちこめた。
50〜60人の避難者の中には負傷した人や泣いている人がいた。小屋の空気が熱くなってきた。「もうだめかと思った。大きな石に直撃されないのを祈るばかりだった」
1時間ほどして、山小屋の関係者が下山を呼びかけた。はじめに下山したのは男性を含めて約20人。けが人や状況を見極めようとした人など数十人は、山小屋に残ったという。