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 長野、岐阜県境にある御嶽山の噴火から約4時間半後、御嶽山の上空をヘリコプターで飛んだ。約4千メートルまで高々と上がった白い噴煙が、上空の弱い風に押され、山の北東、岐阜県高山市や長野県木曽町の方角へわずかに流れる。その煙を避けるように、高度3200メートルで山頂を回り込んだ。

 長野県王滝村上空。標高3067メートルの頂上の南西側、深く切り込んだ「地獄谷」と呼ばれる急しゅんな谷の中腹から複数の噴火口が見て取れた。噴煙の勢いは、ゴーッと音が聞こえてくるような激しさだ。硫黄臭もわずかにする。縦長の亀裂からはじき出されるように噴き出る白煙が不気味だった。

 南西斜面全体では、こうした噴煙が幾筋も上がっている。急な斜面を加速するように上り、頂上付近の山小屋をのみ込んでいた。

 地獄谷から頂上を挟んで反対側には、日本最高所の湖、二ノ池が見える。エメラルドブルーで知られる水面は、火山灰の影響か灰色に変わっていた。頂上の周囲に多くある山小屋にも火山灰が降り注ぎ、登山道の筋すら確認できない。

 灰色一色の世界にオレンジ色の服が目立った。噴火を逃れて下山しようとする5~6人の人たちの姿だ。普段なら軽装の人も目立つ御嶽山の登山道だが、山小屋で配られたのだろう。見えた人たちは、全員が黄色や白色のヘルメットをかぶっていた。降り積もった灰に隠されてか、他に人影は確認できなかった。(斎藤健一郎)