シリア:アサド政権、イスラム国への空爆抑制
毎日新聞 2014年09月27日 19時12分(最終更新 09月28日 00時19分)
【カイロ秋山信一】イスラム過激派組織「イスラム国」に対する米国主導の空爆が続くシリアで、アサド政権がイスラム国の活動地域に対する空爆を抑制していることが27日、反体制派活動家らへの取材で分かった。米主導軍との衝突など不測の事態を避けつつ、戦力を他の地域へ振り分ける狙いがあるとみられる。これにより、首都ダマスカス郊外など米主導軍の活動範囲外では、政府軍が反体制派拠点を制圧するなど攻勢を続けている。
在英の民間組織「シリア人権観測所」や複数の反体制派活動家によると、米国とアラブ諸国が23日に空爆を開始した後、ラッカ、デリゾール、ハサカ各県やアレッポ県北部などでシリア政府軍の空爆や偵察飛行が大幅に減少した。こうした地域は米軍などの空爆の標的となっている。
アレッポを拠点とする反体制派の男性メンバー(25)は電話取材に「政府軍は米軍などに接近して攻撃されるリスクを回避している」との見方を示した。
アサド政権は昨年12月以降、激戦地アレッポなどの反体制派支配地域を連日空爆。イスラム国がイラクに大規模侵攻した6月以降は、ラッカ県などイスラム国支配地域への空爆も強化していた。
一方、ダマスカス郊外や中部ハマ、ホムス、イドリブ各県などイスラム国が活発に活動していない地域では、アサド政権が反体制派への攻勢を続けている。イスラム国の部隊や拠点を攻撃していた空軍力を別の地域へ展開している模様だ。
国営シリア・アラブ通信によると、政府軍は25日、反体制派に制圧されていたダマスカス東郊アドラの産業団地を10カ月ぶりに奪還した。アドラはダマスカスとホムスをつなぐ幹線道路沿いの要衝で、激しい攻防が続いていた。米軍などはダマスカス周辺では空爆を行っていない。アサド政権は米軍などのシリア参戦に伴う「余剰戦力」を活用し、着実に統治範囲を広げている模様だ。