モンゴル出身力士で初の遊牧民が出自。モンゴルでは日本の大相撲の中継を見ながら白鵬の雄姿を目に焼き付けてきた。留学していた鳥取城北高でも大横綱に胸を借りたことがある。「2年生と3年生のときの2回くらい。(体の)柔らかさもあってすごかった」。場所前にも出稽古先で稽古をつけてもらい、勝って恩返しとはいかなかったが、「一発で負けなかったので、うれしかった」と声を弾ませた。
大関稀勢の里、横綱鶴竜には変化してのはたき込みで勝った。この日は師匠の湊親方(元幕内湊富士)から「上手を狙っていけ」と、立ち合いで変わらずに挑むことを課され、それに応えた。正面からぶつかった相撲に館内からも大きな拍手が上がった。
「立ち合いから全部、勉強でした。もっともっと一生懸命稽古して、力をつけたい」
2敗に後退したが、千秋楽で13勝目を挙げ白鵬が敗れれば、再び白鵬と優勝決定戦。「まだ(場所は)終わりじゃない。あしたも思い切りやるだけです」。1世紀ぶりとなる新入幕Vの望みがあるかぎり、怪物は最後まで歩みを止めない。 (新里公章)
(紙面から)