2014年9月27日23時13分
紅葉シーズンの登山が暗転した。長野、岐阜県境にある御嶽山の大規模な噴火。登山者たちは暗闇に包まれた山道を、口を覆い、厚く積もった灰を踏みしめながら、ひたすらふもとへ逃げた。
「ドン、ドン」。黒沢口登山道の山頂近くにある避難小屋「覚明堂」管理人の瀬古文男さん(67)は何度か爆発音を聞いた。直後に雨が降りだし、雷鳴が聞こえた。「何が何だか分からない」。灰で真っ白の登山者が50人近く逃げ込み、小屋はいっぱいになった。
70代くらいの男性は飛んできた石が当たり、頭から流血していた。「寒い」。青ざめていた。肩や腕などを負傷した人も6人いた。1人は顔をゆがめ、「死ぬところだった」と言った。
木曽森林組合の作業員山田春樹さん(46)は、同僚と2人で切り倒した木を運んでいるとき、「ドーン」という音を聞いた。山頂から約5キロの場所。まさか噴火とは思わず、雷だと思った。
車に戻り、ラジオを聞いた。「噴火? まずい」。車から飛び出し、大声で同僚に叫んだ。細かい粒子の火山灰が顔に当たり、強烈な硫黄臭が立ちこめた。ササの葉や地面が灰色に染まっていった。
長野県伊那市の写真家津野祐次さん(68)は、頂上まで200メートルの付近を登っていると、坂道を何人かが走って下りてきた。「噴火だ。逃げろ」。一緒に駆け下りた。
空は灰で覆われ、1歩先も見えないほどの闇に。「もう駄目かもしれない」。岩場で進めず、しゃがみ込んだ。熱風が背中にあたり、小石のような灰が体にぶつかった。10分ほどして、あたりが晴れてきた。「助かった」。雨でぬかるんだ30センチほどの火山灰の中を、2時間ほど歩いて下山した。「いつ死んでもおかしくなかった」
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