宇宙にはまだまだ数多くの謎がある。その中でも最大の謎は「宇宙がどうやって始まったか」という起源に関するものだろう。現在の宇宙論における標準的な考え方では、密度が無限大の「特異点」と呼ばれる点から宇宙は始まったとされている。だが、こういわれてもピンとくる人は少ないだろう。この難しい説明に挑戦する大胆な新説が登場した。
天の川銀河内で起きた星の大爆発(超新星爆発)の残骸。研究グループは4次元宇宙でも星の大爆発が起きたと考えている。画像提供はNASA/CXC/Rutgers/K. Eriksen et al. and DSS
■ブラックホールを包む殻
特異点は想像を絶するほど奇妙なものだ。秩序や規則のない世界であり、未来と過去の区別さえできない。本当に、そうした特異点から、現在観測されているような秩序だった宇宙が出現したのだろうか。
この難問をうまく回避できる新説を提唱したのがカナダのウォータールー大学に所属する研究グループだ。
私たちが存在している宇宙は3つの空間次元からなる。だが、この研究グループのシナリオによると、3次元宇宙が誕生する以前から、4つの空間次元を持つ宇宙が存在していたとされている。その4次元宇宙にも星が存在していて、質量が大きい星の場合、最後に大爆発を起こし、中心部にブラックホールが誕生する。
この4次元ブラックホールも密度無限大の特異点だ。実はそれこそが3次元宇宙の起源とされる特異点に相当するものであり、そのブラックホールを包み込む3次元の殻が、私たちの3次元宇宙であるという。
なぜ、ウォータールー大学の研究グループはそんなとっぴなことを考えたのか。それはブラックホールと共に形成される「事象の地平面」の存在だ。
■すべてを飲み込む「境界線」から誕生
私たちの3次元宇宙において、事象の地平面はブラックホールを包み込む2次元の球面で、それよりブラックホールに近づくと、どんなものでも、光さえも戻ることはできない。逆に事象の地平面より外側にいれば、ブラックホール(特異点)が及ぼす破壊的で予測不可能な影響を受けることはない。つまり事象の地平面は宇宙の秩序を守る壁となっている。
一方、一般的な理解では、私たちの3次元宇宙の誕生時に存在したとされる特異点は事象の地平面を持たない。ならば、3次元宇宙が誕生したときに、特異点とともに事象の地平面を持つような状況が実現したと考えればよいのではないか。そんな発想から今回のシナリオが生み出された。
4次元宇宙における事象の地平面は2次元の面ではなく、3次元の面になっている(ただし、それがどのような存在なのか、私たちがイメージするのは難しい)。そして、その3次元の事象の地平面を囲む、3次元の膜のようなものが、私たちの3次元宇宙の本体だという。
あまりにもとっぴなアイデアに思えるが、超遠方の宇宙を広域的に観測することで、4次元宇宙が実在している証拠をつかめる可能性があるという。
(詳細は25日発売の日経サイエンス11月号に掲載)
宇宙、特異点
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