大阪駅前地下道:愛され半世紀、梅田の地下名店 月末退去
毎日新聞 2014年09月26日 16時30分(最終更新 09月26日 18時40分)
◇一部店舗は残る構え、市は法的措置も
大阪・梅田の「大阪駅前地下道」(約220メートル)で、サラリーマンらに親しまれてきた飲食店などが9月末までの退去を迫られている。半世紀以上の歴史に幕を下ろす店がある一方、一部は10月以降も残る構えをみせる。大阪市は法的措置も検討するという。
JR大阪駅と阪神百貨店の間を東西に走る駅前地下道は1939(昭和14)年に完成した。管理する市が戦後、飲食業者らに占有を許可し、店の営業を認めてきた。
しかし、間もなく始まる阪神百貨店梅田本店の建て替え工事に伴い、市は地下道の幅を約8メートルから約15メートルに広げることを決めた。安全性を確保するためだ。市は占有許可を更新しないことにし、今年1月、各店に退去期限を9月末と通知した。
退去を求められているのは飲食店、チケット店、薬局など約20店。西梅田の飲食店街「ぶらり横丁」の6店や市営地下鉄御堂筋線南改札口近くの老舗串カツ店「松葉」も対象だ。
ぶらり横丁の数店や松葉は9月末で退去せず、10月以降も営業を続ける意向という。市は「退去する時間は十分あった」として、退去しなければ行政代執行など法的措置を取る方針だ。
一方、66年間「地下街の古書店」として愛された地下道東側の「萬字屋書店」は月末で閉店し、年内に阪急梅田駅高架下の「阪急かっぱ横丁」に移転する予定だ。店主の小林伸光さん(62)は「天気に左右されない地下街を離れたくないが、移転後も多くの人に愛されたい」と話す。
約80平方メートルの店内に天井まで届く本棚が並び、江戸時代の小説など貴重な古書から雑誌のバックナンバーまで1万冊以上をそろえる。
父秀雄さん(故人)が46年に梅田のビルで開業したが、2年後に移転。小林さんによると、当時毎日新聞記者だった作家、井上靖氏が知人の秀雄さんに今の場所を紹介した。
移転当時は天井も床も土がむきだしで通路が薄暗かった。それでも多くの人が開店前から行列を作った。80年ごろには、地下街の床はタイル張りになり、サラリーマンらが客の中心になった。
常連客の70代男性は「55年以上通い続けた思い出の場所。地下街からなくなるのはさみしい」と惜しんでいた。【黄在龍】