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 ●市教委「安全確保」12月から

 いわき市教育委員会は26日、12月から市内の小中学校の給食に使うコメを県外産から市内産に切り替えると発表した。原発事故後、保護者らの放射性物質への不安を考えて北海道産などを使っていたが、市内産でも安全を確保できると判断し、使用再開を決めた。ただ、不安を感じる家庭は子どもに弁当や、ご飯だけを持参させることもできる。

 ●弁当持参認める

 吉田尚教育長らが記者会見で説明した。対象となるのは、市内の小学校72校と中学校42校に通う子ども計約2万8千人。使うコメは年間約400トンを見込む。

 再開を決めた理由について、市教委はまず、食品衛生法の放射性セシウムの基準(1キロあたり100ベクレル)よりも厳しい「1キロあたり20ベクレル」を定めていることを指摘。給食で使うコメには(1)県による全袋検査(2)県学校給食会などの抽出検査(3)市教委による抽出検査――の体制が整っているとして、子どもの健康に影響は生じないと判断した。

 小中学校の保護者には近く、チラシで今回の決定について知らせるという。

 同規模の自治体である郡山市は原発事故後も地元産のコメを使い続けている。福島市はいったん会津産を使っていたが、昨年から地元産に切り替えた。一方、いわき市の北隣の広野町は保護者の不安を理由に県外産を使っている。

 ●母親ら「話し合う場ほしかった」 

 いわき市の給食をめぐっては市内の母親らでつくるグループが3月、子どもたちの内部被曝(ひばく)を避けるためとして、地元産の食材を使わないよう求める約6800人分の署名を清水敏男市長に出していた。

 今回の決定を知ったメンバーの女性は「残念です。安全が確認できたわけではなく、影響はまだわからないはずなのに」と語った。10月にも再び市に署名を提出しようと、集めていたところだった。

 原発事故から3年半以上がたち、被曝への不安を口にしづらい雰囲気になっていると感じる。「じっくりと話し合う場が欲しかった。声が上がらないからと言って、みんなが納得しているわけではないと思う」

 いわき市の給食は震災前、食材品目の約30%が県内産だったが、現在は3%余りにとどまっている。市教委の本田宜誉(よしたか)・学校支援課長は会見で「風評被害対策として(いわきのコメを)使うのではなく、あくまで安全だと考えたためだ」と述べた。(根岸拓朗)