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【芸能・社会】

麻実れい 台本読んで涙止まらず 舞台「炎 アンサンディ」28日から上演

2014年9月26日 紙面から

「老若男女問わず、特に若い学生たちに見ていただきたい」と話す麻実れい=東京・三軒茶屋で(高嶋ちぐさ撮影)

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 麻実れい(64)が主演する舞台「炎 アンサンディ」が28日に、東京・三軒茶屋のシアタートラムで幕を明ける。母国レバノンからカナダに移住した劇作家ワジディ・ムワワドが、レバノン内戦をモチーフにした衝撃作だ。中東系カナダ人のナワルが、双子の娘(栗田桃子)と息子(小柳友)にのこした謎めいた遺書。死んだはずの父親と聞いたこともなかった兄に渡すよう託された手紙とともに遺書に従って母の生き様をたどる旅に出た姉弟が、運命に翻弄(ほんろう)された母親の凄絶(せいぜつ)な生涯を知ると同時に、自分たちに隠されていた秘密に打ちひしがれるという筋立てだ。

 演出の上村聡史さんが5年越しで温めていた作品。映画化された「灼熱の魂」は、2011年度のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。

 ナワルを演じる麻実は、最初に台本を読んだ時、「涙を止めることができなかった」という。あまりに理不尽な成り行きでありながら、魂の浄化につながる内容。民族、宗教などの違いから起こる紛争が、「もはや誰が誰に向かって銃を向けるのかもわからない」泥沼に陥り、ごく普通の人たちに果てしなく続く不幸の連鎖を思い知らされる。初演されたのは、2003年のフランスとカナダ。その後ヨーロッパ各国で上演されてきた。

 今回は、図らずも中東問題が注目される中での上演になる。「状況が重なりますから、私たちは責任を感じますし、いろんな思いをお客さまにお伝えしなければ」と麻実は気を引き締める。

 膨大なセリフの量に加え、10代、40代、60代と一人で演じ分ける難しさがある。「杉村春子さんの『女の一生』が頭をよぎった」。が、年代順に演じるのではなく、現代と過去が行き来する構成で、「普通の演劇形態とちょっと違っていて、映像のカット割りのようなんです。時間軸を越えて演じますから、『出』の前のそのたびごとに10代、40代、60代になる頭の中のギアチェンジが大変」。同じフレームの中で、2つの時代が同時進行で演じられるほか、麻実以外の6人が20人以上の人物を演じるのも妙味だ。

 実は、麻実の長男の結婚相手がレバノンの女性。全くの偶然だが、披露宴のため現地を訪れたことがある。「果てしなく美しい鍾乳洞や食材も豊かでおいしいワインもある」一方で、内戦の爪痕が痛々しかったという。「ライフルを持った軍人があちこちにいて、現地人といっしょでなければとてもいけない」と思った。それでも「家族の絆がものすごい」と感じたことが、演じる糧になりそうだ。

 「つらくて痛い」舞台だが、「とにかく戦争というのは絶対にしてはいけないっていうところが最大のメッセージですし、人間として一番大切なことは自由に生きる、愛を持って生きる、そういうことの素晴らしさをお伝えできれば。最後は人間賛歌というところまで行き着けるので、豊かで奥深く素晴らしい本(戯曲)だと思います」と力強く話した。

 出演はほかに岡本健一ら。10月15日まで東京公演の後、同18日兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールで。 (本庄雅之)

 

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