朝日新聞はまだ懲りないのか!? 「米国のシリア空爆」でも「ねじ曲げ」報道

2014年09月26日(金) 長谷川 幸洋
upperline

お読みいただければ、あきらかなように、書簡は次のように書いている。

〈今回のケースのように、脅威が存在する国が(注:イスラム国による)こうした攻撃で自国領土を守ることもできず、また意思もないときに、国家は国連憲章51条に反映されているように、個別的かつ集団的自衛権の固有の権利に従って自衛することが可能でなければならない〉

パワー国連大使は「集団的自衛権に基づいて空爆した」とは言っていない。「憲章51条の個別的かつ集団的自衛権に基づいて自衛する権利がある」と主張しているのだ。この部分は憲章51条そのものの言い回しを引用している。51条は個別的自衛権と集団的自衛権を明白に区別していない。両者をセットで「固有の権利」としているのだ(http://www.unic.or.jp/info/un/charter/text_japanese/)。

「吉田調書報道」と同じ「ねじ曲げ」ではないか

ところが、朝日はそこから集団的自衛権だけを記者が抜き出して報じたのである。あえて個別的自衛権の部分を落としたと言ってもいい。それだけではない。朝日は個別的自衛権について先の朝刊でどう書いたかといえば、次のようだ。

〈米国人記者2人が「イスラム国」に殺されたことや、シリアにいるアルカイダ系武装組織「ホラサン・グループ」の米国などへのテロ計画が最終段階に入っていたとの情報を踏まえ、米国は自国民を守る「個別的な自衛権」を行使したと主張している〉

これも書簡の原文に当たると、次のようになる。最後の部分だ。

〈加えて米国は、ホラサン・グループとして知られるシリアのアルカイダ系組織が米国や友好国、同盟国に与えている脅威に対処するためにシリア領内で軍事行動を始めた〉

ここで「個別的な自衛権を行使した」などという説明はない。ようするに、米国はあくまで憲章51条にある固有の権利として個別的かつ集団的自衛権に沿って軍事力を行使した、という立場を述べているにすぎない。べつに「この部分は集団的自衛権で、あの部分は個別的自衛権で」などとは説明していない。

そういう説明は朝日が勝手に付け加えたのである。これは吉田調書報道と同じような「ねじ曲げ」ではないか。

previous page
3
nextpage



underline
アクセスランキング
昨日のランキング
直近1時間のランキング
編集部お薦め記事
最新記事