これを読んで、書簡が国連憲章51条に言及していたことが分かる。この時点で私は頭が「???」だった。こんな重要な問題で、本当に朝日が書いたように「米国は集団的自衛権の行使だ」と明言したのだろうか、と思った。だったら、読売はなぜそう書かないのか、と思った。
そのうえで翌25日の朝日朝刊を開いてみると、問題の論点についての記事は「シリア空爆、自衛権を主張」という見出しで本文はこう書いていた。
〈オバマ氏の国連演説に先立ち、米国のパワー国連大使は23日、「イスラム国」への空爆をシリア領内で実施したことについて、「国連憲章51条に基づく自衛権行使」だとする文書を国連の潘基文事務総長に提出した。
…文書によると、「イスラム国」の攻撃にさらされているイラクから空爆を主導するよう要請を受けたとして、他国が攻撃された場合に反撃する「集団的自衛権」を行使したとしている〉
ここでも前日夕刊の線を維持している。前段は国連憲章51条の行使と読売夕刊と同様に書いているが、後段の「集団的自衛権を行使した」というくだりは記者の地の文章だ。これは本当だろうか。本当なら、米国は集団的自衛権の行使でイラクを空爆したという話になる。
事実は国連大使の書簡を読めば明らか
事実を確認するには、パワー国連大使の書簡そのものを読めばいい。検索すると15分もかからず、すぐ見つかった。書簡は潘基文事務総長に送られた後、安全保障理事会のメンバー15ヵ国に回覧された。国連憲章で加盟国が51条の自衛権に基づく軍事行動を起こした場合は、直ちに安保理に報告するのを義務付けられているからだ。各国に出回っているのだから、ちょっと取材すれば入手できるのだろう。
全文は以下のとおりである(この全文はhttp://www.businessinsider.com/the-syria-strikes-and-international-law-2014-9というサイトでも読める)。
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