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福島県でなぜ「ガン死」が増加しているのか?〜誰も書けなかった福島原発事故の健康被害〜【第2回】

宝島 9月26日(金)10時17分配信

先月号(『宝島』10月号)に掲載した福島県内で急増する「急性心筋梗塞」のレポートは各方面から反響を頂戴した。引き続き本号(『宝島』11月号)では、全ガン(悪性新生物)の死亡者数が、これも増加傾向にある背景について検証する。

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福島県でなぜ「ガン死」が増加しているのか?〜誰も書けなかった福島原発事故の健康被害〜【第2回】

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福島県でなぜ「ガン死」が増加しているのか?〜誰も書けなかった福島原発事故の健康被害〜【第2回】
【地図A】 福島県0〜18歳の子どもの甲状腺ガン発症率(暫定)
■小児甲状腺ガンはすでに多発している

 前号では、福島県で多発・急増する「急性心筋梗塞」の問題を検証したが、今回は、原発への賛成・反対にかかわらず、関心の的である「ガン」に注目してみたい。
 旧ソ連・チェルノブイリ原発事故(1986年)の際に多発が確認されたのが、「子どもたちの甲状腺ガン」である。福島原発事故においても、事故発生当時18歳以下だった福.島県民36万7707人のうち、今年6月末時点で57人の子どもが甲状腺ガンと確定した。甲状腺ガンの疑いがある者まで含めると、実に104人(良性結節1人も含む)に及んでいる。
 地域別の発症率を見ると、福島市などの「中通(なかどお)り」が一番高くて10万人当たり(注1)36.4人。次いで、いわき市などの「浜通(はまどお)り」が同35.3人。原発直近の「避難区域等」が同33.5人。一方、原発から80キロメートル以上離れた「会津地方」は最も低く、同27.7人だった。放射能汚染の度合いが高い「中通り」と、相対的に低い「会津地方」では、同8.7人もの地域差がある【地図A】。
 しかし、小児甲状腺ガン調査を担当する福島県立医科大学はこの地域差を、
「被曝の影響とは考えにくい」
 としている。すでに地域差が表れている点についても県立医大は、会津地方では精密検査が終わっていない子どもたちが多く、甲状腺ガンと診断される子どもが今後増える可能性があるとして、
「地域別発症率に差がない」
 と、かなり強引な解釈をしている。
 また、被曝の影響を最も受けやすいと見られる0〜5歳で甲状腺ガンの発症がまだ一人も確認されていないこと(現時点での最年少患者は6歳)を、県立医大はことさら重視し、調査が進むにつれて甲状腺ガン患者が増え続けていく現状についても、
「被曝の影響とは考えにくい」
 と、オウム返しのように連呼している。
 ともあれ、彼らの主訴は、
“福島県で原発事故による健康被害は発生していない”
 ということなのであり、「考えにくい」のではなく、安定ヨウ素剤を子どもたちに飲ませなかった責任を追及されるのが怖い──という本音が見え隠れしている。
 そもそも、県立医大の期待どおりに会津地方でも小児甲状腺ガンが増えていくかどうかは不明である。それに、原発事故による放射能汚染は会津地方にも及んでおり、会津地方でも発症率が高まることが、直ちに被曝の影響を否定することにはならない。
 国立ガン研究センターの「地域がん登録全国推計値」によれば、子どもから大人までを含む全年齢層における甲状腺ガンの発症率は、10万人当たり年間7〜8人だという。また、事故当初、甲状腺の専門医らは、通常時における小児甲状腺ガンの発症率は「100万人に1〜2人」(=10万人当たり0.1〜0.2人)だと、マスコミ等を通じて説明していた。
 これらの数字に比べると、福島県の子どもたちだけで「10万人当たり30人以上」という調査結果はかけ離れて高く、まさに「多発」と呼ぶに相応(ふさわ)しい。福島県は原発事故以前から「小児甲状腺ガン多発県」だったという話もない。

(注1)この「10万人当たり」は、人口を分母にしての値ではない。この値を求める計算式は、分母を「1次検査の受診者数」として、分子が「甲状腺ガンやその疑いがあると診断された者の数」である。「中通り」の場合、受診者数が16万7593人で、甲状腺ガン患者数が61人なので、61÷16万7593×10万人=36.39…となり、小数点以下第2位を四捨五入して「36.4人」になる。

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最終更新:9月26日(金)10時52分

宝島

 

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