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<赤ちゃんポスト>7年間に受け入れ101人 11人に障害

毎日新聞 9月26日(金)22時21分配信

 熊本市の慈恵病院が運営する「赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)」の運用を検証する市の専門部会(部会長=山縣文治・関西大学教授)は26日、2007年5月の運用開始から約7年間に受け入れた101人のうち約1割にあたる11人に何らかの障害があることを明らかにした。専門部会が幸山政史市長に提出した検証報告書は、障害が預け入れの理由かは不明としながらも「新たな課題となる懸念がある」としている。

 報告書によると、ゆりかごが受け入れた人数は、運用開始から最初の2年半(第1期)が51人で、次の2年(第2期)は30人、今回(第3期)は20人と徐々に減少している。このうち障害のある子供は▽第1期5人▽第2期3人▽第3期3人−−だった。

 また、101人のうち身元が分からない子供は26人。特に第3期は受け入れた20人のうち4割(8人)の身元が分からず、改めて匿名での預け入れを「容認できない」と指摘した。慈恵病院に対しては「預け入れに来た者と積極的に接触しない病院側の姿勢も増加に影響している」として、子供の出自を知る権利を守るために努力を払うよう求めた。

 一方、低体温などで医療措置を必要とした子供が第3期は9人に上り、第1期(4人)や第2期(2人)に比べて増えていた。車中を含む自宅出産を経て預けられた子供も第2期から増加し、ゆりかごの扉の外側に子供を置く事例も1件あった。

 幸山市長は「報告書の内容は重く受け止めなければならない。身元の確認について病院には最大限の努力をしてほしい」と述べた。

 報告書提出を受けて記者会見した慈恵病院の蓮田太二理事長は「預けた人への接触には限界がある。(身元を確認される)恐怖感から、親が病院の近くに子供を捨てることになってもいいのか。そこまで踏み込んで考えてほしい」と反論した。【井川加菜美、松田栄二郎】

 ◇匿名か実名か…熊本市と病院、平行線のまま

 「子供の命」と「出自を知る権利」のどちらを優先するべきか−−。「こうのとりのゆりかご」を巡る専門部会は検証報告書で匿名での利用を容認しない姿勢を改めて強調し、慈恵病院に出自に関する情報確保の努力を求めた。逆に慈恵病院は「預け入れ数低迷の背景には匿名性が保たれない恐れがあるのでは」と指摘するなど、利用者と積極的に接触しない姿勢を崩さない。報告書に強制力はなく、両者の主張は平行線で着地点は見えない。

 一方、ゆりかごを設置する慈恵病院に設置された相談窓口への妊娠・出産に関する相談件数は急増しており、今年4〜6月は3カ月間の件数で運用開始から最多となる712件に上った。県外からの相談が大半で、自治体での相談受け付けなど公的支援が機能しておらず、慈恵病院の負担は増すばかりだ。

 ゆりかご設置の参考にされたドイツでは今年、出産前に相談機関に実名を明かし、仮名のまま医療機関で出産する「内密出産法」が施行された。匿名性を維持しながら出自を知る権利も担保しようと、行政が真剣に取り組む姿勢がうかがえる。日本でも行政が主導し、足踏みが続くゆりかごを巡る状況を打開すべきではないか。【井川加菜美】

最終更新:9月26日(金)23時40分

毎日新聞

 

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