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「昼顔」最終回レビュー「夫がいるくせに畑を荒らさないでください。男の数は限られてますから」 

2014年9月26日 10時00分

ライター情報:木俣冬

『幸転力』吉瀬美智子/小学館

[拡大写真]

いや、びっくりシーンの連続でした。
連続ドラマ「昼顔〜平日午後3時の恋人たち」(フジテレビ木曜22時〜)の15分拡大の最終回(9月25日放送)。

開始10分ほどで、紗和(上戸彩)と北野(斎藤工)の潜む山荘に、夫、妻、舅と姑が乗り込んできてのド修羅。派手に盛り上げてくれました。
その後も、ド修羅に次ぐド修羅の連続で、酒瓶片手にベランダから狂言自殺しようとする乃里子(伊藤歩、妊娠も虚言だったらしい)、加藤(北村一輝)を「死んじゃえ!」となじる利佳子(吉瀬美智子)の娘たち、加藤の盗作事件を知って怒鳴り込んだ挙げ句、彼の右手を使いものにならなくしてしまう利佳子の元彼・智也(淵上泰史)などなど、紗和と北野、利佳子と加藤による不倫男女のとろけるような肉体的接触よりも、彼らを引き裂こうとする夫、妻、姑、元彼、娘などによる男女混合、男対男による暴力的な接触のほうが、全11話中、エキサイティングだったとはいったいどいうことなのでしょうか!?

いや、最も、エキサイティングだったのは、紗和が寂しさを紛らわすために、
コンビニの袋に北野の似顔絵を描き、ポットにかぶせて、さらにはポロシャツを下に敷いていたことです。
そして、紗和と北野が、妻や夫たちによって引き裂かれていくときに、コンビニ袋の似顔絵をもっていくという。いったい、これ、どういう気持ちで見ていいの? と心が大きく揺れました。

悲しいシーンなのに爆笑してしまう。
いったいなぜ、ここへ来て、こんなことを?
「昼顔」にめっちゃハマった人たちへ、これ、ドラマですから! 本気にしないで! という警鐘でしょうか。
でも、これがあったからこそ、「昼顔」は、単なる消費ドラマではなく、ちゃんと作品として記憶に強く残ることになったと思います。
視聴率がいいと、遊びを入れることができるんだなあ。やっぱり、いろんな制約を気にして普通なものを作るよりも、のびのびともの作りをしたほうが面白いものになる気がします(妙に真面目)。

そして、こういうふうに、多少茶化したことで、やっぱり不倫は重罪で、断罪、断罪また断罪ものであるのかもしれないと思わせます。
誰かを傷つけちゃうのですから。
ド修羅の現場で「恥知らずー!」と絶叫!ビンタ連発!で大活躍した姑(高畑淳子)が、「裏切られたことって忘れられないのよ」と夫の不倫を思い出してしんみり言っていました。
このドラマを見ている人たちや、広い世の中には、捨てられた者たちがたくさんいるってことをわかった上での、すばらしい流れです。

ライター情報

木俣冬

文筆業。ドラマ小姑。著書に『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』。他、ノベライズ『マルモのおきて』、『君が踊る、夏』『シュアリー・サムデイ』、構成を担当した『蜷川幸雄の稽古場から』『堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』などがある。演劇、映画、ドラマ、アニメなどの面白さを日夜追求している。『SPEC〜天〜』『外事警察その男に騙されるな』公式ライター
ツイッター @kamitonami

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