建設工事が進む整備新幹線の3線区について、政府・与党が完成時期の前倒しを検討し始めた。

 2035年度に開業予定の北海道新幹線(新函館北斗~札幌、211キロ)は5年前倒しを、25年度完成予定の北陸新幹線(金沢~敦賀、113キロ)は3年前倒しを目指す。22年度開通予定の九州新幹線(武雄温泉~長崎、66キロ)も、できるだけ早めるという。

 事業費の総額が3兆3千億円に達する3線区の建設を政府が認可したのは2年余り前。「造ることになったのだから、早く開通させた方がよい。地元も望んでいる」というのが理由だ。

 もっともな主張ではあろう。ただ、深刻な財政難と人口減少の中で、整備新幹線の新規着工自体に根強い疑問や反対があったことを忘れないでほしい。

 現在の完成時期は、財政の厳しさにも配慮しつつ決めた、ギリギリの計画ではなかったのか。財源の具体的な検討はこれからだが、建設前倒しは税金など公費の増額につながる恐れが多分にある。

 整備新幹線は独立行政法人が施設を建設・保有し、運行を担うJR各社に貸し出す。政府・与党は、完成後に入る使用料収入を担保に独法が銀行から借金したり、上場を目指しているJR九州の株式売却益を充てたりすることを検討するという。

 しかし、使用料の活用で短縮できる工期はせいぜい1~2年だ。JR九州の上場はまだ目標の段階にすぎない。

 整備新幹線への税金投入は、国と自治体が2対1の割合で負担してきた。今年度の拠出額は合わせて1千億円余の予定だ。

 使用料をフルに活用したうえで不足分に税金を充てても、1年あたりの増額は200億円余りで済む。そんな計算もある。

 ただ、政府・与党内では、他の分野でも歳出増を求める声があちこちから上がっている。不足する社会保障財源をまかなうための消費増税が呼び水となり、安倍政権が主要課題に掲げた「地方創生」が拍車をかける構図だ。来春に統一地方選を控え、財政再建という課題を忘れたかのような様相だ。

 消費増税を重ねても社会保障費はまかなえず、高齢化で増えていく。東日本大震災に伴う復興財源も、さらに手当てを迫られそうだ。

 問題なのは、整備新幹線の前倒し建設で増える公費の多寡ではない。財政規律をゆるめる「アリの一穴」にならないか。私たちが心配するのは、そのことである。