地球温暖化対策のための新たな国際的枠組みをつくる目標時期は、来年末とされている。

 あと1年余りに迫ったいま、温室効果ガスの2大排出国である米国と中国が取り組み強化に前向きな姿勢を示した。

 異常気象や海面の上昇など、さまざまな影響が地球を覆っているといわれる。米中は、言葉だけでなく具体的な目標と行動で世界を率先してほしい。

 主な温室効果ガスである二酸化炭素を出す量は、中国が1位、米国が2位だ。両国だけで世界の4割以上を占める。

 今週、国連本部で開かれた気候サミットには120カ国以上の首脳が参加した。「気候変動は確実な現象である」(オランド仏大統領)といった認識や危機感が次々表明された。

 オバマ米大統領は「米中は先頭に立つ特別な責任をもつ」とし、「来年の早い時期に(20年以降の)新たな削減目標を示す」と明言した。

 米国は、先進国にのみ削減を義務づけた京都議定書から離脱した。だが、最近は石炭火力発電所に厳しい規制をかけるなど一定の努力も見せている。

 一方、大気汚染が深刻な中国の張高麗副首相も「温暖化対策は我々の内なる要求だ」と述べ、できるだけ早く排出を減少に転じると表明した。

 中国は従来、排出総量の削減義務は負わないとして、国内総生産(GDP)当たりの削減目標しか掲げてこなかった。しかし、新たな目標を来年1~3月の期間内に発表するとし、方針転換の可能性を示唆した。

 新しい枠組みでは、すべての国が自ら約束した削減を進めることになっている。米中が目標を定め、本腰を入れることは、温暖化防止の実効性の面からも、国際的な政治・倫理面からも、必要不可欠である。

 米国には野党共和党や産業界の強い反対があり、中国は削減の時期やペースが問題だ。両国は「特別な責任」を果たす努力を惜しんではならない。

 サミットでは、化石燃料から再生可能エネルギーへの100%転換を表明した国もあった。

 一方、安倍首相は温暖化に伴う災害の対策などでの貢献をアピールしたものの、削減目標は提出時期も示せなかった。

 長期にわたる温暖化対策に取り組むには、まず国としての意思を明確にすることが重要だ。

 原発の規制基準が強化され、原発に大きく頼った削減はもはや現実的ではない。再生可能エネルギーを中核にすえ、脱原発と削減の二兎(にと)を追う決断が求められている。