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【全文】世界で活躍するコンサルタントが明かす成功の秘訣:「話を聞く」と組織が変わる

 組織を変えるために、必要なこととは何でしょうか。組織を改革する際には多くの選択肢があり、選ぶべき選択肢はその都度異なってくるでしょう。

 世界各地で活躍するコンサルタントのエルネスト・シロッリ氏が、世界で4万件の起業支援をする中で見出した原則の一つは、「黙って話を聞くこと」でした。話を聞くことで、果たしてどのようなことが変わるのでしょうか。

 ここでは、経営コンサルタントのシロッリ氏が、企業の成功にとって重要な「話を聞くこと」の大切さを語ったTEDの講演を書き起こします。

スピーカー

エルネスト・シロッリ / 経営コンサルタント

動画

見出し一覧

・200頭のカバにトマトを食べられる
・話を聞かなければわからない
・世界300ヵ所で4万件の起業を支援
・自動車の登場で変わったニューヨーク
・世界的に成功する企業が持つ、ただ一つの共通点

200頭のカバにトマトを食べられる

 仕事も含めて私が現在していることで、私の人生の土台になっているのは、若い頃に7年間アフリカで働いた経験です。私は見かけほど若くはないのですが、1971年から77年にかけて、ザンビア・ケニア・コートジボワール・アルジェリア・ソマリアといったアフリカ各国で技術支援の活動をしていました。

 私はイタリアのNGOで活動していましたが、アフリカで立ち上げたプロジェクトはことごとく失敗し、とても悩みました。当時21才だった私は、自分たちイタリア人は善良だし、よくやっていると思っていました。ところが、やることなすこと全てがダメでした。

 最初のプロジェクトは、私の初めての著書『ザンベジ川のさざ波』で書いたように、私たちイタリア人がザンビアの人々に食糧生産の技術を指導するものでした。まず、私たちはイタリア産のタネを持ってザンビア南部に入りました。そして、壮大な峡谷がザンベジ川へと下っています。私たちが地元の人に教えたのは、イタリアン・トマトやズッキーニの育て方ですが、当然誰も興味を持ちません。そこで、現地の人に来てもらうためにお金を渡したら、時々人が来るようになりました(笑)。驚いたことに彼らは、肥沃な大地があるのに農業をしません。でも私たちは農業をしない理由も聞かず、「来てよかった」と素直に喜んでいたました(笑)。「国民が飢える前に助けに来られた」と。

 アフリカでは何でも見事に育ちましたし、大きなトマトも実りました。イタリアでは普通の大きさですが、ザンビアではとても大きくなります。信じられなかったけれど、ザンビアの人には「農業なんて簡単でしょう」と言いました。しかし、トマトが熟して真っ赤になった頃に、夜中200頭のカバが河から現れてトマトを全部食べてしまいました(笑)。「なんてことだカバが!」と言っていたら、彼らは答えて「だから農業はしないのさ」と言います。なぜ教えてくれないのかと聞くと、「聞かないからさ」と答えました。

 そのとき、最初に失敗しているのは私たちだけかと思っていました。しかし、アメリカ人やイギリス人、フランス人がやっていることを見てからは、自分たちのザンビアでの活動を自慢したくなりました。だって少なくともカバには食料を与えたのですから。

 私たちがこれまで純真なアフリカの人々に与えたガラクタを見てください。本を読むならザンビアの女性エコノミスト、ダンビサ・モヨが2009年に出版した『援助じゃアフリカは発展しない』がお勧めです。西洋諸国はこの50年間、アフリカ大陸向けに2兆ドルもの資金援助をしました。この資金が与えた損害は今はお話しません。彼女の本を読んでください。アフリカの女性から私達が与えた損害を学ぶのです。

 西洋人は帝国主義者であり、植民地主義者であり宣教師です。そんな我々が知る、人との接し方は2種類です。庇護を与えるか、父親のように振る舞うかです。どちらもラテン語の"pater"「父」という単語を含む言葉で表されます。ですが、2つの言葉の意味はかなり違います。”paternalistic"が表すのは、異なる文化圏の人々をまるで我が子のように扱う、子どもを愛する態度です。"patronizing"が表すのは、異なる文化圏の人々を自分の召使いのように扱う態度です。白人がアフリカでは"bwana"「ボス」と呼ばれる理由がこれです。

話を聞かなければわからない

 私は『スモールイズビューティフル』を読んで、平手打ちされたような気がしました。著者のシューマッハーは、経済発展の過程では人々が支援を必要としないなら放っておくべきだと言います。これが支援の第一原則です。つまり支援の第一原則は「尊重」なのです。今朝のスピーチで男性が、私達に挑むように言っていたではありませんか。「ネオコロニアル様式ではない街を築けないものか」と。

 27才の時に自分から行動せず、要請に応じるだけにしようと心に決めて「事業促進」という仕組みを作りました。この仕組みでは自分から行動を起こすことはしません。人に何かをやらせる代わりに、地元の有志や、よりよい人間になりたいと考える人々のための奉仕者として働きます。つまり、その時に大事なのは黙っていることです。アイデアを与えるために出かけて行くのではなく、地元の人と話をしに行くのです。オフィスで作業はせず、カフェやパブで話をします。インフラは持ちませんが、人と仲良くなってその人が何をしたいのかを探ります。

 ここで大切なのは情熱です。アイデアを与えるのは簡単ですが、やりたくないと言われたらどうしようもありません。成長への情熱が女性にとって一番大切で、それは男性にとっても同じです。そして話を聞いた後に、必要な知識を得る手助けをします。誰しも1人では成功できないからです。アイデアのある人が必要な知識を持つわけではなく、知識は手に入れるものです。なので私は、「コミュニティーに入ってみんなに指示する代わりにみんなの話を聞こう」と考えるようになりました。けれども公の集まりではいけません。

 秘訣を教えましょう。コミュニティーの集会には欠点があります。それは起業家が来ないことです。それにみんなが集まる集会では、自分のお金を使ってやろうとしていることや、自分が見つけたチャンスを教えてくれるわけがないのです。つまり発想自体に欠陥があります。その土地の優れた人材を見つけられないのです。なぜなら公の場に現れないのですから。

 そこで1人ずつあたっていくことにしました。1人1人と話すには、社会的インフラを一から作る必要があります。新しい職業が必要なのです。その仕事は、企業やビジネス向けのファミリー・ドクターのようなもので、自宅のキッチンやカフェで話を聞き、情熱を生活の糧に替えるための経営資源を探す手伝いをします。

世界300ヵ所で4万件の起業を支援

 西オーストラリア州エスぺランスで試しました。その頃博士号に取り組みながら、私は地元の人を守るために指示してやろうという態度を捨てようとしていました。エスぺランスでの1年目は街を歩き回りました。3日目に最初の依頼がありました。依頼者はガレージで魚の燻製を作っているマオリの男性でした。私はその男性に対し、パースのレストランへの販売と組織作りを手伝いました。すると今度は漁師が来て「マオリを手伝った人かい?俺達も助けてくれないか」と言うのです。なので私は5人の漁師と協力して、見事なマグロを1キロわずか60セントでアルバニーの缶詰工場に売るのではなく、1キロ15ドルで寿司ネタ用として日本に売る方法を見つけました。すると今度は農家が助けを求めてやってきました。そのように活動を続け、1年で27件のプロジェクトを立ち上げました。すると政府の役人が来て、ノウハウを教えてほしいというのです。だから私は、「とても難しいことですが、黙って話を聞くことがノウハウです」と答えました(笑)。

 そうしたら役人はまたやれと言うんです(笑)。私達は世界中300か所で実践し、4万件の起業支援をしてきました。新世代の起業家たちは孤立が原因で挫折していきます。

 史上最高の経営コンサルタントの1人であるピーター・ドラッカーが、96才で亡くなったのは数年前です。彼はビジネスに関わる以前は哲学の教授でした。彼はビジネスに関わる以前は哲学の教授でした。ドラッカーは「計画というものは起業社会や起業経済とは相容れない」ものだと述べています。計画は起業家にとって致命的です。

 クライストチャーチは現在復興中ですが、才能あふれる人たちが自分の金と精力を注いでやろうとしていることがわかっていません。教えを請う人達がやって来て、自分から話しだす方法を学ぶ必要があります。秘密とプライバシーを守ると約束し、手助けの名人にならなければいけません。そうすればみんな列をなしてやって来ます。人口1万人なら依頼者は200人です。人口40万人のクライストチャーチなら、相当の知性と情熱を秘めているはず。午前のプレゼンではどこで一番拍手をしましたか。地元の情熱的な人のプレゼンですね。

自動車の登場で変わったニューヨーク

 今はまさしく起業家の時代なのです。現在、産業革命の第一波が終わろうとしています。再生不能な化石燃料や製造により、システムは持続不能になっています。内燃エンジンは続けられないし、フロンの使用も続けられません。考えなければならないことは、食料・医療・教育・交通コミュニケーション手段を、持続可能な形で地球上の70億人にどう与えるかです。これを実現するテクノロジーはまだ存在しません。では誰が「グリーン革命」に向けた技術を開発するのでしょう?大学はあてになりません。政府も無理でしょう。答えは起業家です。しかも彼らはもう開発を始めています。
 
 以前、未来がテーマの雑誌で面白い記事を読みました。1860年にニューヨークの未来について議論するため、専門家が招集されました。大勢で集まって、100年後のニューヨークがどうなるかを予測したのです。全員一致の結論は、100年後ニューヨークは存在しないというものでした。彼らはグラフを見てこう結論づけたのです。もし今の割合で人口が増加したら、住人が市内を移動するために600万頭の馬が必要になるでしょう。ただ600万頭分のフンは処理しきれないでしょう。街はすでに馬のフンだらけだったのです(笑)。1860年に専門家が注目したのは、移動のための汚れた技術でした。ニューヨークはそのせいで窒息寸前だったのです。

 その後どうなったか?40年後の1900年には、アメリカに1001か所の自動車製造会社が出来ていました。1001か所です。別の移動の技術を探るというアイデアが、すっかり優勢になっていました。だから辺ぴな場所に小さな工場がたくさんあったのです。例えば、ミシガン州ディアボーンにはヘンリー・フォードがいました。

世界的に成功する企業が持つ、ただ一つの共通点

 さて、起業家と仕事をするには秘訣があります。まず、秘密を守ることを約束する必要があります。そうでなければ起業家は相談に来てくれません。次に、100%の献身と情熱を約束しなければなりません。さらには起業の実態を教える必要があります。小さな会社も大きい会社も、次の3つを完璧にできなければなりません。

 1つ目に素晴らしい商品を作れること、2つ目に素晴らしい営業ができること、3つ目に優れた財務管理ができることです。ただそうは言っても、製造と販売とお金の管理を同時にこなせる人など見たことがありません。そんな人はこの世にはいないのです。私たちは世界にある100の大企業、カーネギーやウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー、フォード、GoogleやYahooといった新興企業も含めて調査をしました。その中で、世界の成功した企業に共通する点はたったひとつでした。どの企業も一人では始めていなかったのです。

 ノーサンバーランドの高校生に向けた起業の授業では、1時間目にリチャード・ブランソンの自伝の最初の2ページを渡しています。生徒はその2ページを読んで、ブランソンが「私」と書いているのが何回で、「私たち」と書いているのが何回かを下線を引いて調べます。「私」はゼロで「私たち」が32回です。ブランソンは独りで起業したわけではないのです。会社を一人で立ち上げる人はいません。そのためコミュニティーを作るのです。小規模ビジネスの経験をもつ世話役がカフェやバーで待っていて、仲間が手を貸してくれます。自伝の著者ブランソンのために仲間がしたのと同じように声をかけてくれます。「必要なものは?できることは?これを作れる?じゃあ販売は?財務管理は?」と訊ね、できないと言えば「誰か紹介しようか」と言ってくれます。

 私たちはコミュニティーを活性化します。多くのボランティアが支える「事業促進」は、経営資源や人材を探す手伝いをします。私たちが知ったことは、地元の人の知性が奇跡を起こし、そのコミュニティーの文化と経済が変わるということです。身近な人の情熱とエネルギーと想像力をきちんと捉えれば可能になるのです。

 どうもありがとう(拍手)

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【全文】最高のリーダーシップとは何か。21世紀のリーダーに求められる可能性を知る

 優れたリーダーの条件とは何か。組織を率いる人であれば、誰もが知りたい事柄だと思います。さまざまなタイプのリーダーが存在するなかで、どのようなリーダーを目指せば良いかは人によって異なるでしょう。

 そのような一見わかりづらい疑問に対して、ボストン・コンサルティング・グループでシニアパートナーを務めるロザリンデ・トーレス氏は、「時間・人脈・行動」の3点から優秀なリーダー像を語ります。

 ここではTEDのプレゼンテーション動画「優れたリーダーになる条件」より、長年の研究をもとにトーレス氏が語る講演を書き起こします。

スピーカー

ロザリンデ・トーレス / ボストン・コンサルティング・グループ シニアパートナー

動画

見出し一覧

・半数以上の会社にはリーダーを担える人材がいないという現実
・「リーダーとして働く上で最高の会社」にいた優秀なリーダーは50名中1人
・敵とも思える人まで巻き込む?優秀なリーダーの活躍を研究
・21世紀の優秀なリーダーとしての可能性を知る3つの問い

半数以上の会社にはリーダーを担える人材がいないという現実

 現代における優れたリーダーの条件は何でしょう?リーダーと言って思い浮かべるのは、大抵が全能のスーパーヒーローであり、堂々と陣頭指揮を取って部下たちを守る人物でしょう。しかしそれは過去の話です。
同じように時代遅れなのが、リーダー養成プログラムです。これらは既存の成功モデルを元に作られていますが、そのモデルは古く、現在や今後を見据えた効果的なプログラムではありません。

 私たちは4千社を対象に調査を行い、各社で行われているリーダー養成プログラムがどれほど有効かという事実を調査しました。そのうち58%の会社は「重要なリーダーとしての役割を担える人財が大幅に不足している」と答えています。会社は、社内外の訓練プログラムや評価査定コーチングといったものを用意しているのにもかかわらず、半分以上の会社で優秀なリーダーを十分輩出できていないのです。

 自分の所属する会社は自分を育てて21世紀の優秀なリーダーにしてくれるのかと思われているでしょうか?恐らくそれはないでしょう。私はこの25年間仕事を通じて、何が優秀なリーダーたらしめる要素なのかを見てきました。フォーチュン500(アメリカのフォーチュン誌が一年に一回作られるリストの一つで、全米の企業が総収入に基づいてランキングされる)の企業で働いたこともありますし、200名以上の最高経営責任者に助言し、リーダーとのコネクションを築き上げてきています。それは皆さんがご想像する以上のことでしょう。

「リーダーとして働く上で最高の会社」にいた優秀なリーダーは50人中1人

 しかし数年前あることに気付きました。リーダー候補者たちに気がかりな傾向があったのです。リーダーとして努力をする甲斐なくさまざまな方が同じような憂き目にあっているのです。

 例えばある社員は最高のリーダーになる高い素質を備えていながら、新しい部署に異動した後に失敗して、取り返しのつかない損害を発生させました。また企業のCEOがもどかしさを感じる話も聞きます。なぜなら「リーダーとして働くのに最高の会社」と評されながら、自社にいる上位50名のリーダーのうち、重要な戦略を任せられるのは1人だけだったからです。活躍する時代を経験したベテランのリーダーたちが市場の変化についていけず、会社の規模を半分にまで縮小し、会社を畳まざるを得ないほど追い込まれるのです。

 同じことが繰り返し起こるのを見て自然と2つの疑問を持ちました。なぜリーダー養成強化の流れとは裏腹に、リーダーシップ・ギャップが拡大の一途をたどっているのか?優秀なリーダーが成長できるのは、何が違うからなのだろう?私は疑問で頭がいっぱいになり、リーダーが失敗する話を聞くことに耐えがたくなったので、仕事を辞めてフルタイムで、優秀なリーダーの条件に関する研究に取り組むことにしました。

敵とも思える人まで巻き込む?優秀なリーダーの活躍を研究

 1年かけて世界中をまわり、さまざまな企業や国、NPO(非営利団体)でリーダーシップがどう実践されているのか、実効性があるものとないものについて実例を学びました。例えば、南アフリカを訪れたときはネルソン・マンデラ氏について知る機会を得ました。マンデラ氏がどのように時代の先を読み、政治、社会、経済の流れを予想し導いてきたかという経緯を理解できました。その他にも多くのNPOのリーダーにも会いました。その人物は財源がかなり限られているにもかかわらず、世界に大きな影響を与えるリーダーで、一見敵とも思えるような人まで巻き込んでいました。

 それから膨大な時間をかけて大統領図書館で調査し、環境がどのようにしてリーダーをリーダーたらしめ、リーダーらしい行動を起こさせ、次の世代にも残るような影響を与えたのかについて解明しようとしました。そしてフルタイムの仕事に戻って、今の職場で同じ問いに関心を持つ素晴らしい同僚に恵まれました。

 以上の私の経験から、私はリーダーとして活躍する人たちの特徴と行動の違いをあぶり出しました。さらにリーダーになるにあたり、その資質を最大限生かすためにすべきことを見出しました。ここでいくつかご紹介しましょう。

21世紀の優秀なリーダーとしての可能性を知る3つの問い

 21世紀の世界は、以前よりグローバルかつデジタルで透明性も増しています。さらに情報の流れや技術革新のスピードが速く、何をやるにしても複雑な基盤が必要になっています。そのため昔ながらの能力開発プログラムを実施しても、リーダーになることはできないのです。事実、伝統的な評価手法、限られた360度評価や時代遅れの実績評価では不当に高い評価がされるため、実際の能力以上にリーダーになる準備ができているように本人も勘違いをしかねません。
 
 21世紀にふさわしいリーダーシップを備えているかは3つの問いで決まります。
1つ目は、あなたが何を見て、自らのビジネスモデルや人生に来たる変化を予想しているかということです。この答えはあなたのスケジュール表にあります。誰と時間を過ごしているか?どんな話題に注目しているか?どこに旅行しているか?何を読んでいるか?そして自分の経験をどのように生かして変化の兆しを察知し、すぐ行動を起こす決断をして、準備万端にできているか?リーダーで構成されるあるチームでは、各メンバーで事例を持ち寄り、それらを共有して戦略の軌道修正や変化を見据えた意思決定を行います。優秀なリーダーは下ばかり見ていません。曲がり角の先まで見て、単に現状に対応するのではなく、自ら将来を形作るのです。

 2つ目の問いは、どうやって自らのプライベートや仕事上の人脈を多様化させているかです。学閥はよく聞きますね。実際にそうした学閥のようなネットワークは、今も多くの組織であります。ですが、それも程度の問題で、私たちも一緒にいて楽な人とつながっています。そのためここで問題となるのは、自分と性質が大きく異なる人たちと関係を築く能力なのです。ここで挙げる違いは、生物学的、身体的、機能的、政治的、文化的、社会経済学的なものかもしれません。以上のような違いがあっても、自分と異なる人たちと関係が築ければ、あなたを十分に信頼し、手を差し伸べてくれ共に目標を達成できるようになるのです。優秀なリーダーは皆分かっていますが、多様な人脈を持つことによって、より幅広くパターンを認識し、解決策を見出すことができるのです。自分とは違う考えをする人たちを味方に付けているからです。
 
 3つ目の問いは、思い切って過去にあなたを成功に導いたやり方を捨てられるか、ということです。「波風を立てないようにする」という言葉があります。でも、もしこのアドバイスに従えばおそらくリーダーとしては前例に倣い、楽なことを繰り返すだけです。優秀なリーダーはあえて違うことをします。リスクテイクを語るだけでなく、実際に行動を起こします。ある優秀なリーダーから聞いたことですが、大きな影響を与えることを成し遂げられるのは、感情面でのスタミナを鍛え、自分の新しいアイデアがナイーブだとか無謀だとか、単におかしいと他人に言われることに耐えられるようになったときだそうです。面白いことに、こうして仲間になろうとする人はいつもの顔馴染みではありません。たいていは違う考えを持った人で、あなたの仲間に加わって果敢に躍進しようとしているのです。ただの前進ではなく躍進です。どんな伝統的なリーダー養成プログラムより、これらの3つの問いに答える方が21世紀のリーダーとしてふさわしいか確かめられるでしょう。

 21世紀における優秀なリーダーの条件とは何でしょうか?優秀なリーダーに多く会いましたが、どの人も傑出していました。これらの女性・男性に共通するのは、常に準備をしているということです。過去の成功体験に甘んじることなく、今日この日の現実のため、そしてまだ見えない明日のあらゆる可能性に準備するのです。

 ありがとうございました。(拍手)

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【全文】「塔を建て、チームを作る」:簡単なグループワークが示すチームワークと成果の関係

 ビジネスをしていく中で、「周りと協調することが大切だ」という話を聞いたり、リーダーシップやチームワークについて学んでいる方も多いことでしょう。しかし、チームワークと成功の関係について、私たちはしっかりと考えたことがないのかもしれません。

 ここでは、チームワークと成果の関係性について、「マシュマロ・チャレンジ」という簡単なグループワークを用いて検証した内容と考察を、クリエイティブディレクターであるトム・ウージェックが語った内容を書き起こします。

スピーカー

トム・ウージェック/クリエイティブディレクター

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・チームワークの本質を示す共同作業「マシュマロ・チャレンジ」
・「マシュマロ・チャレンジ」の達人は建築家と…幼稚園児!?
・あなたの仕事の中にも「マシュマロ・チャレンジ」はある

動画

チームワークの本質を示す共同作業「マシュマロ・チャレンジ」

 数年前のTEDで、ピーター・スキルマンというデザイナーの方が「マシュマロ・チャレンジ」というデザインの課題を紹介してくれました。ルールはとても単純です。4人のチームが20本のスパゲッティと90センチずつのテープとヒモ、そしてマシュマロを使ってできるだけ高い自立式の建造物を作るのです。その建造物の一番上にはマシュマロを乗せなければなりません。聞いていると簡単そうですが、チームのメンバーとの素早い協力が要るので、実はかなり難しいのです。「これは面白い」と思って、私はデザインの講習に組み込んでみました。結果は大成功でした。それ以来世界中で70回ぐらい「マシュマロ・チャレンジ」を行っています。学生やデザイナーや建築家、そしてフォーチュン誌が発表する「世界で最も賞賛される企業 ベスト50」に選ばれる企業のCTOまでが参加しています。マシュマロ・チャレンジには、共同作業の本質に関わる深い教訓が含まれています。その一部をご紹介しましょう。

 通常、多くの人々は課題の確認から取りかかります。課題について話し、どんな形にすべきか検討し、主導権争いをします。それからしばらくは計画と準備に時間を割きます。スケッチを描き、スパゲティの配置を決めます。持ち時間の大半はスパゲッティを組み立てて建造物を高くすることに費やされ、終了時間の間際になってようやくマシュマロを取り出して慎重にそれを一番上に置き、後ろに下がって自分たちの作品を褒め称えます。しかし、多くの場合はマシュマロの重みで建造物全体がひしゃげて潰れてしまい、最終的な結果は残りません。

「マシュマロ・チャレンジ」の達人は建築家と…幼稚園児!?

 ある種の人々は、他の人と比べてみても失敗をしやすい傾向にあります。特にひどいのはビジネススクールの新卒者です(笑) 嘘をつき、ズルをし、気を散らせて本当にひどい建造物を作ります。その反面、成功する機会が多いグループもあります。上手なのは幼稚園の年少の児童たちです(笑) 本当に驚くべきことです。幼稚園児たちは高いだけでなく、一番面白い建造物を作ります。

 誰もが、「なぜ幼稚園児は成功しやすくて、ビジネススクールの新卒者は失敗するのか」と疑問に思うでしょう。ピーターは「子どもたちは誰も『スパゲッティ株式会社』の社長になろうなんてしていないのです」と言います。幼稚園児たちは、権力争いで時間を無駄にはしません。別の理由もあります。ビジネススクールの学生たちは、適切なプランを1つ見出すように教育されています。そして、プランの通りに実施します。彼らがマシュマロを一番上に乗せる頃には時間がなくなっています。そして危機が起きるのです。誰もが聞いたことがあるような状況ではないでしょうか?幼稚園児たちがビジネススクールの学生と違っているのは、マシュマロから始めるところです。園児はいつもマシュマロを一番上に置いて次々と試作品を作ります。そのため、出来の悪い試作品を何度も修正できるのです。デザイナーの方なら、試作品を作り続ける作業こそ、反復型プロセスの本質だと気付かれるでしょう。作るたびにフィードバックが得られ、上手く行く点、もしくはうまく行かない点がすぐにわかります。

 試作品を作る能力は本当に重要なのです。チームのタイプごとの成績を見てみましょう。全体の平均は50センチくらいです。しかし、ビジネススクールの学生はその半分ぐらいの成績で、弁護士はそれよりはましですが平均以下です。幼稚園児はほとんどの大人たちよりも優れています。それでは一番良くできたのは誰でしょう?建築家とエンジニアです。この結果には少しほっとしますね(笑) 今まで見た中では99センチが最高記録です。なぜ建築家とエンジニアは高い建造物が出来るのでしょうか?建築家とエンジニアは、安定した建造物を作るには三角形をつくること、そして自己強化する幾何学構造がキーポイントになることを知っているからです。CEOたちは平均よりも少し良い結果を出しています。面白いことに、チームに管理責任者を置くとCEOの成績は著しく上がります(笑)

 私は、全体を見回したときに「あそこが勝つな」と終わる前からわかるようになりました。どうしてでしょう?管理役の人々は「ファシリテーション」という特殊技能を持っているからです。管理役の人はプロセスを理解し、管理します。どのチームであれ、作業を注意深く観察し、管理すればパフォーマンスを大幅に向上させることができます。特殊技能とファシリテーションの技能、そしてその組み合わせが大きな成功へと導くのです。ごく普通の10チームがあったとすると、およそ6チームは自立することができる建造物を作るでしょう。

 あるとき、私は面白いことを試してみることにしました。優勝チームへの賞金を上げようと思ったのです。優勝チームには1万ドル分のソフトウェアを贈ることにしました。すると、デザインを学ぶ学生たちに何が起きたと思いますか?なんと、少しでも高さのある建造物を作れば優勝できたのにも関わらず、1チームとして立っている構造体ができなかったのです。高額賞品の存在が悪い影響を生むというのは面白いですね。4ヶ月後、同じ学生たちにもう一度演習をさせました。今回はどうなったと思いますか?彼らは試作品を作ることの重要性を理解し、最低の結果を残す集団から、歴代でもトップクラスの成績を残す集団に変わったのです。最小限の時間で最も高い建造物を作りました。ここに動機づけと成功の性質についての重要な教訓があります。

あなたの仕事の中にも「マシュマロ・チャレンジ」はある

 ここまで聞いた人は、「どうしてマシュマロ・チャレンジをやるのか?」と疑問に思われるかもしれません。私がマシュマロ・チャレンジを続ける理由は、私の仕事がデジタルツールやプロセスを作り、車やゲームや視覚効果の制作者たちを手助けすることだからです。そして、マシュマロ・チャレンジは彼らが隠れた仮定を見出すのに役立つのです。なぜならば、実のところどんなプロジェクトにも固有の「マシュマロ」があるからです。この課題を通し、適切な試作をするための共通の体験、共通の言葉共通の態度が築かれるのです。それが、この実に単純なマシュマロ・チャレンジの価値なのです。

 興味を持った方はmarshmallowchallenge.comをご覧ください。マシュマロの建造物の建て方を見ることができます。そして、マシュマロ・チャレンジを行うための手順が書かれています。世界中の人が創意工夫した例を見ることができます。なんと、世界記録もあります。

 根本的な教訓として、デザインは人と人との触れ合いであることがわかるでしょう。作業に全ての感覚を投入することを要求され、自分の最高の思考と感性、そして行動を適用し手にした難問に向かう必要があります。ちょっとした試作を行うだけで、失敗を成功に変えられることもあります。そして、失敗が成功に変わることは大きな変化を起こし得るのです。

 どうもありがとうございました。

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