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荒神様の花嫁 作者:雪琦

01

 その人は気だるげに髪をかきあげると、ふうと一つため息をついた。
 色白の肌に髪がこぼれ落ち、ぞくりとするほど艶っぽい。
 私は布団を引きずったまま壁に下がり、あわあわと口を震わせた。
「お、お、お……っ!」
 女の人じゃなかったの!?
 声にならぬまま、着物の襟をはだけさせた人物を見つめる。
 そこには、本来ならあるはずの膨らみがなく、潔いほどに真っ平らな胸板が覗いていた。
 ひどく面倒そうに立ち上がり、大股で近付いてきた美女に、私はびくりと身体を震わせた。
 う、嘘だ。嘘にきまっている。これは夢に違いない。
 しかし変わらぬ現実に耐えきれず、ついに「きゃあああ」と叫びそうになった瞬間、距離を一気に縮められ、むぐと口を塞がれた。
「叫ぶのはおやめ」
 怖いほど美しい顔が目と鼻の先にある。私は涙目でふるふると頷いた。
 彼女はよしと言うと、塞いでいた手を離す。
 解放された私は布団をかき抱き、小さく丸まって嘆いた。
「う、う、うわーん! 騙されたー!」
 どこからどう見てもきれいな女の人だったのに!
 えぐえぐと涙を流して嘆いていると、背中で深いため息が響いた。そして女性にしてはハスキーだけどかっこいいなあと思っていた声の主が、呆れた声で言った。
「人聞きの悪いことを言うのはおよし。私がいつ女だと言った」
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