挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
荒神様の花嫁 作者:雪琦

02

 もし、未来が知ることができたのなら。
 人は違う人生を歩むのだろうか。
 いつか終える命を胸に、後悔せぬようにと。
 だから、もし、あの時。
 変わらぬと信じていた日常を失うと知っていたなら。
 私はもっと、日々を大事に出来たのかもしれない。

●●●

 灰色の空から、ぽつぽつと雨が降る。
 頬をつたい流れる雫を拭いもせず、私は天を仰いだ。
 墨を垂れ流したかのように空は暗い。埃っぽい風が湿気でうねる髪を揺らす。
「……ここ、どこかなあ……?」
 のんびりと呟き、腕を組んだ。
 近所の森を散策し、途中で迷い、やっと抜けたと思ったら見慣れぬ景色。
 まさかひと山越えて別の街に来たわけじゃないよね。
 目の前には小さな集落が広がっている。博物館とかで再現された昔の風景のようだ。
 のん気に考えている間にも、雨は激しさを増していき、大粒の雫が全身を濡らしていった。
 どうしよう。とりあえず、雨宿り出来るところを探さないと。
 遠雷の音を聞きながら、私は当てもなく歩き始めた。
 しばらくすると、小さな神社を見つけた。小走りで軒下に行く。
「はぁ~……びしょぬれだ……」
 まあ、今は夏だし、すぐに乾くよね。
 服の裾を絞れば気持ちいいほどに水が出る。一通り絞り終わり、私は神社を眺めた。
 とても古いお社だけど、丁寧に掃除がされている。きっと代々大切に受け継がれてきたんだなあ。
 そっと扉を押せば、なんと開くではないか。
 私は「ちょっと雨宿りさせてください」とお願いしてから、神社の中で休ませてもらうことにした。

●●●

 どれほど時間が経ったか。一時間は経っているだろう。
 未だに雨が止む気配はなく、雷は次第に近づいて来ていた。
 格子から空を見つめていれば、稲妻が空を裂き、轟音が神社を震わす。
 これは危ないなあ。
 時たま感じる悪寒に、私はごろりと床に身体を横たえた。
 先ほどから身体がだるい。ちくりと刺すような節々の痛み、風邪をひいたかなと予想をつける。
 困ったな。こんなところで熱を出したら、大変なことだ。
 再び響いた雷鳴に耳を傾けながら、私は眠りの淵に沈んでいった。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想及びレビューは受け付けておりません。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ