西山貴章
2014年7月10日19時16分
京都府舞鶴市で2008年、高校1年の女子生徒が殺害された事件で、殺人と強制わいせつ致死の罪に問われた中勝美被告(65)=別の事件で服役中=の無罪が確定する。最高裁第一小法廷(横田尤孝〈ともゆき〉裁判長)が8日付の決定で「被告を犯人だとするには合理的な疑いが残る」として、逆転無罪を言い渡した控訴審の判断を支持し、検察側の上告を退けた。5人の裁判官全員一致の意見。
事件は08年5月に起きた。舞鶴市の雑木林で小杉美穂さん(当時15)の遺体が見つかり、京都府警が09年4月、窃盗罪で服役中だった中被告を殺人などの容疑で逮捕。被告は一貫して否認していた。
この事件では、被告と犯行を結びつける「直接証拠」がなかった。検察側は、犯行時間帯に現場近くで被告に似た男性と若い女性を見たとする車の運転手の目撃証言や、「知人が被害者の遺留品を捨てるのを目撃した」とする被告が、その遺留品の特徴を説明した供述などの「間接証拠」を立証の柱とした。
小法廷はこの日の決定で、目撃証言について「取り調べを重ねるにつれ、被告の特徴と矛盾する部分が消え、被告の特徴と一致するよう変遷した」と指摘。遺留品の供述も「当初はあいまいだったが、多数回にわたる長時間の取り調べで次第に具体的な供述に変わった」とし、供述が誘導された可能性を示唆した。
11年の一審・京都地裁判決は、被告が被害者を鈍器で何度も殴って殺害したなどと認定し、無期懲役(求刑は死刑)とした。だが12年の二審・大阪高裁は「目撃証言は信用できない」として逆転無罪を言い渡した。被告は釈放されたが、その後、窃盗事件で実刑判決を受け現在は服役している。
弁護人の小坂井久弁護士は「極めて適正かつ的確な判断がなされた」、中被告は弁護人を通じて「無実が証明されてほっとしている。府警と検察官に強い憤りを持っている」とする談話を、それぞれ出した。
三浦守・最高検公判部長は「主張が認められなかったのは誠に遺憾だが、最高裁の判断を真摯(しんし)に受け止めたい」との談話を出した。(西山貴章)
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朝日新聞社会部
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