株式日記と経済展望

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今後円安の定着により国内生産のメリットが確認されれば、製造業の国内生産回帰は活発化しよう。

2014年09月25日 | 経済

今後円安の定着により国内生産のメリットが確認されれば、製造業の国内生産
回帰、輸入業者の国内調達による輸入代替によって、国内生産は活発化しよう。


2014年9月25日 木曜日

過熱感なき、熱狂なき円安・株高は新トレンドを示唆する 9月25日 武者陵司

(2)円売り投機の条件整う、円安は止まらない

円安オーバーシュートの可能性

 為替決定の三大条件、(1)紙幣印刷速度、(2)貿易収支(=為替の実需給)、(3)実質金利(=為替の投機需給)、がすべて史上初めて円安方向にベクトルが揃っている。加えて30年間の執拗な円高の原因であった地政学(覇権国米国の国益)が円安容認にシフトした。購買力平価(PPP)ベースで見れば103円/ドル前後が妥当な為替水準であるが、為替にオーバーシュートはつきものである。図表4に見るように過去の主要国の為替変動幅は、PPP±30%がこれまでのレンジであった(1980年から2000年までの異常円高期を除いて)。となれば1ドル120円台後半までの可能性も出てくる。

 以下に為替決定の三大条件が決定的に変化していることを見ていく。

 第1の円安の条件は、今や日銀は世界随一のハト派でありベースマネーの伸びは世界最大であるということである。言うまでもなく、通貨の強弱を決める最も基本的条件は、マネー供給のバランスである。日銀が世界一紙幣を大量に印刷しているということは、最大の円安要因である(図表5)。

 第2に、日本は昨年来著しいドルの実需要を生み出す空前の貿易赤字(2014年年率15兆円ペース)に陥っている。それは輸入業者が年間15兆円もの輸入代金のためのドル買いを迫られていることを意味する。かつての日本は大幅な貿易黒字が続き、輸出業者のドル売りが常態化し、ドル円の実需給は常に大幅なドル売り円買い圧力にさらされていた。それが大きく逆転したのである(図表6)。

 第3に、日本の実質長期金利は史上初めてマイナスかつ世界最低になっていることが注目される(図表7)。これまで日本はデフレが続いていたために、名目長期金利が世界最低であるにもかかわらず、実質金利は他国以上に高かった。実質金利が高いということは借金の負担が大きく借金返済のモチベーションが高まることであり、結果、日本では信用収縮傾向が強かった。しかし、今や日本は世界最低かつマイナスの実質金利の国となり、日本が世界で一番借金をしやすい国になったのである。言うまでもなく借金をするということは、為替取引では円ショート(円を売ること)を意味する。円は世界で一番買われやすい通貨から、売られやすい通貨に転換したのである。

円=“safe haven”ステイタスの終焉

 以上3つの決定的と言える円安要因は、当分変わりようがない。つまり円の価値を決定する基軸が180度転換したのである。

 これまで円は世界最大のセーフヘイブン(safe haven)・スイテタスとしてリスク回避時に、避難先として選好されてきた。リスクオフの局面では、世界唯一のデフレにより実質価値が増価する円の魅力度が当然に高まってきたのである。しかし、今や円は実質金利が世界最低なのであるから、最も価値の減価が激しい通貨、つまり最も持ちたくない通貨となったのである。そうした世界の投資家に共有されるパーセプションの地滑り的変化が今、起きつつあると考えられる。

 日本の投資家のパーセプションも決定的に変化しつつある。これまで「Cash is King」としてリスク回避に徹していた家計・年金・保険など日本の投資家は、リスク資産として外貨建て資産を増加させる必要が高まる。現金・預金・債券に過度に比重を置いていた日本の投資主体は、外貨建て資産を大きく増加させるだろう。GPIFの運用改革はその嚆矢となるだろう。

(3) 円安の利点は甚大である

円安のマイナスは全て一時的なもの

 黒田日銀総裁の「円安が経済にとってマイナスであることはない」という表明とは裏腹に、急ピッチの円安に対して懸念が噴出している。中小企業を代表する日本商工会議所の三村明夫会頭は「日本全体として円安のデメリットよりもメリットを享受してきたが、中小企業や家計にはデメリットが大きい」と発言。「一段の円安には、原発再稼働を進めエネルギーコストを抑制するのが不可欠と強調した」(ロイター)。確かに、これまでのところ円安が輸出数量の増加に結び付いていない。また円安がもたらすエネルギーなどの輸入品物価高が実質賃金を引き下げる。円安はデメリットとの主張は筋が通っているように見える。

輸出数量が伸びないのは日本の輸出が非価格競争品になっている表れ

 しかし、それらのマイナスは一時的なものであり、あらゆる点で円安は望ましい。円安でも輸出数量が伸びないのは、現在の日本の輸出品の大半が価格競争品ではないので、値下げ競争を挑んでいない、つまり「円安→ドル建て輸出価格引き下げ→輸出数量増」というサイクルが起こらないから、と考えられる。輸出数量が増加しないこと自体、日本の輸出構造が非価格競争品(技術・品質)にシフトしていることの証明なのである。

 言うまでもなく輸出数量が伸びなくても、円安メリットは十分に存在する。海外現地法人の円ベースでの所得が(日本からの輸入コストの低下と為替換算益により)増加し、それは所得収支の改善を通して日本の経常収支を支える。今後円安の定着により国内生産のメリットが確認されれば、製造業の国内生産回帰、輸入業者の国内調達による輸入代替によって、国内生産は活発化しよう。国内設備投資、国内生産の動きが鈍いのは、タイムラグと円安趨勢にまだ疑心暗鬼であるためと考えられる。

 円安物価高で一時的に実質賃金が低下するのは確かである。しかしそれは日本に賃上げを定着させるため不可避のプロセスに過ぎない。円安は日本の賃金を国際水準から大きく引き下げるので事後に賃金上昇圧力を生む。それは円高の結果日本に賃下げ圧力が高まったのと同じ理由である。企業収益の持続的向上が実現できているのであるから、いずれ賃上げ高まりが実質所得を増加させるのは間違いあるまい。

 先週号(9月16日号)の「週刊エコノミスト」の論考(「融緩和も財政政策も弊害に、輸出・設備投資・比人消費・公共投資『アベノミクス』の4つの誤算」)で反リフレ派の代表的論客である河野龍太郎氏は貴重な分析を披瀝している。曰く「一国経済にとって円安が良いのか円高が良いのかは、マクロ経済の状況に依存する。もし総需要が不足で大きなスラック(未稼働資産)が発生しているのなら、円安が望ましい。しかし(現在の日本はスラックがなくなっているため)円安を助長する超金融緩和のデメリットが高まっている」

 この分析の前半は全く正しい。しかし後半は著しい事実誤認をしていると思われる。日本は過去15年間、世界唯一賃金下落(名目賃金も生産性を加味した単位労働コストで見ても)を余儀なくされてきた。賃金が労働需給を測るもっとも適切な指標であるとすれば、日本に労働の余剰がないなどという結論にはならないはずである(建設業などの雇用ひっ迫は一部に限られ、事務職は依然大幅な供給過剰である)。

 また日本の金利は名目でも実質でも世界最低である。金利は資本需給を示す最高の指標であるから、日本は世界最大の資本余剰が存在している国である。つまり市場価格は日本経済におけるスラック(資本余剰、労働余剰)が著しく大きいことを示している。恣意性の余地が大きい潜在供給力推計に基づく余剰の推定は、実態から離れているのではないか。市場価格は日本に著しい余剰があることを示しており、河野氏の主張に従って円安が望ましいと言うことになる。

円安→企業増益が引き起す好循環

 円安継続が必至であるとすれば、デフレ脱却というアベノミクスの目的は達成される。円安はインフレを継続させ企業収益を押し上げる決定的要因だからである。経済と株式の展望を考える時、企業業績の持続性が決定的に大切である。それは企業業績が、雇用、賃金(ひいては消費)、企業投資、株価のすべての変化の起点だからである。そして、現在の日本では円安の定着が企業増益持続のカギとなっている。そのための必須の条件が日銀による質的量的金融緩和の維持にあることは言うまでもなく、それに対しても不安は全くないのである。

 2015年3月期の企業業績は1割増益と史上最高と見られているが、これは円安加速によりさらなる上方修正は必至である。

 くれぐれも円安批判の高まりにより、デフレ脱却、金融緩和の矛先が鈍らないように望みたい。



(私のコメント)

日本の円安へのトレンド転換は地政学的なものであり、日本は85年のプラザ合意以来30年間円高が続いてきた。為替は経済に大きな影響を与えるから、なぜ円高になるのか、なぜ円安になるのかの検証が必要でしたが、要するにアメリカがドルを刷り続け日本が金融を引き締めてきたからだ。

ならば円高で輸出企業が悲鳴を上げている時に、財務省はなぜ直接介入に拘って金融緩和しなかったのだろうか? 日銀が金融緩和すればインフレになると言い続けてきましたが、これだけ金融緩和してもインフレは起きていない。起きているのは金融緩和に伴う円安であり株高だ。中国は人民元を安く維持するために爆発的なマネー供給を続けている。


中国の人民元安が認められて日本の円安が認められてこなかったのはアメリカの都合がそうだったからだ。アングロサクソン流の支配統治は分断して統治せよであり、アメリカは日本を敵として中国を味方として為替を操作してきた。だからGDPでは中国に抜かれて日本は弱体化した。オバマ大統領は中国とのG2戦略を発表して、中国を同盟国として育てようとした。ロシアを牽制するためである。

しかし中華思想の抜けない中国は、アメリカの味方になるどころかロシアと組んでアメリカの覇権に挑戦し始めた。ロシアはクリミア半島を取り、中国は南シナ海に軍事基地を建設している。これに対してベトナムやフィリピンは中国には対抗が出来ない。アメリカもウクライナ問題や中東問題で手一杯であり動きが取れない。

残された手段は、日本を強化して中国やロシアに当たらせることであり、再び日清日露戦争前に戻りつつある。日清日露戦争の勝利や大東亜戦争の敗北は米英の計算通りの事であり、日本はそれに踊らされてきただけだ。為替相場も同じであり頻繁に開かれるG7財務相会合で決定されているらしい。ロシアはG8会議からはじき出されましたが中国並みの国家としてみなされたからだ。

小泉・ブッシュ時代に円安が求められて2007年には1ドル=120円にまで円安になった時がありましたが、民主党が政権をとると2011年には75円にまで円高になった。アメリカが好ましい政権と思わない時は為替を吊り上げてしまえば首相や政権は求心力を失って失脚する。このように為替相場でその国をコントロールできればこれほど痛快な事は無いだろう。

韓国のウォン高もそうであり、パククネ政権の中国寄りの外交を好ましく思っていないからウォンを吊り上げてパククネを追い込んでいる。このようにアメリカ(国際金融資本)の動向を読むことが相場で儲ける事に繋がる。現在のトレンドは冷戦体制の復活であり、カギとなるのはヨーロッパと日本の動向だ。ヨーロッパと日本がロシア・中国側に付けばアメリカは孤立してしまう。

だからアメリカとしては新冷戦体制を構築してヨーロッパと日本をアメリカ側にする必要がある。ロシアに対する制裁もアメリカとヨーロッパとでは違いがあり、アメリカは強硬だ。ロシアと中国が国際ルールを守る民主国家になれば国際金融資本にとっても良かったのでしょうが、プーチンは国際金融資本を叩き出した。習近平も外資を追い出しにかかってきた。

アベノミクスによる円安が日本にとってプラスかマイナスかで意見が分かれていますが、武者氏は円安による企業業績の改善でプラスになると見ている。円高の時に海外に投資してきた海外資産は円安による資産効果でドル建て資産が水膨れするからだ。個人でも80円の円高の時にハワイやカリフォルニアに別荘を買った人は109円になって3割も値上がりしたようなものだ。

つまり円安になる事によって、海外に投資されてきた資産が売却されて国内に戻る事が多くなり、それが景気回復につながる。円安が続けば中国などの工場を移していた企業が、国内に戻ってくる事もあるだろう。中国のバブルが破裂すれば市場としての中国の魅力も無くなる。日本が世界最大の債権国家であり、円高で海外投資して円安で回収すれば確実に儲かる。国際金融資本も同じでありドル高で海外投資してドル安で回収してきた。

経団連などは円高で大変だと騒ぎ、円安でもまた大変だと騒いでいる。個人も同じであり円高だと思ったらドル預金をして金利と為替差益のダブルインカムを手に入れるべきなのだ。株式投資も同じであり、円高株安の時に株を買って、円安株高で株が高くなったら売って行けばいい。



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