昨日、アメリカを中心とする各国の共同作戦でシリア内で活動する「イスラム国」の拠点に対する空爆が実行されました。

これまでの作戦と違う点は、アメリカが現在の最新鋭機であるF-22を、初めて実戦に投入したという点です。

2
(出典:ウィキペディア)

F-22ラプターは総予算670億ドルのプログラムで、これまでに配備されているのは僅か188機ですから単純計算で一機当たり386億円ということになります。

なぜ今回の作戦にF-22ラプターが使用されたか? という点ですが、ウォールストリート・ジャーナルのジュリアン・バーンズ記者は、「シリアには高性能のレーダーがあり、それをよけながら作戦を実行するためにはステルス性能の良いF-22ラプターを使用する必要があった」としています。

また同機は他の戦闘機より高く飛べるし、目標から24キロメートルも離れた地点から誘導ミサイルを発射し、命中させることが出来ます。

そのような性能が、今回の作戦にぴったりだったのです。

さて、F-22ラプターは防衛関連メーカーのコンソーシアムによって製造されていますが、メインのコントラクターはロッキード・マーチン(ティッカーシンボル:LMT)です。

LMT

株式市場では同社の配当(利回り3%)は「鉄板である」と認識されており、主に利回りを切り口とした投資家に買われる銘柄です。

同社の一株当たりの業績は下のグラフのようになっています。

1

【略号の読み方】
DPS一株当たり配当
EPS一株当たり利益
CFPS一株当たり営業キャッシュフロー
SPS一株当たり売上高

これで見るとSPSは大きいけれど、EPSは小さい、つまり「薄利多売」な体質であることがわかります。


ただ、これは防衛産業という業種に因るところが大きいと思います。請負産業であり、しかも納品先が米国政府なので、入札の際、利幅は政府の「言いなり」にならざるを得ません。

ロッキード・マーチンはF-22の他にも、過去最大の調達プログラム(1兆ドル)と言われているF-35ライトニングのメイン・コントラクターでもあります。

これらの主力戦闘機調達計画は、一度受注すると何十年もコンスタントな売上高が見込めます。最近のロッキード・マーチンの受注残と売上高の推移は、下のグラフのようになっています。

2

つまりすでに受注済みの仕事を、しっかりと「消化」してゆくことが、同社にとって最も重要なことなのです。


ロッキード・マーチンは、戦闘機の他にもミサイルや宇宙システムを作っています。

3

競合関係となると先ずノースロップ・グラマン(ティッカーシンボル:NOC)が挙げられます。ノースロップが得意としているのは、ドローン(無人偵察機)です。また伝統的にボーイング(ティッカーシンボル:BA)もライバルなのですが、ボーイングの場合、旅客機が主力であり、防衛関連は最も重要なプログラムではありません。

なおロッキード・マーチンはマリリン・ヒューソンという女性CEOに率いられています。

1

近年、潜水艦などを作っている大手防衛関連メーカー、ゼネラル・ダイナミクス(ティッカーシンボル:GD)でもCEOがフィービー・ノヴァコヴィックという女性に交代し、防衛産業は女性の進出がとりわけ進んでいる業種となっています。