秋田弁護士刺殺:3回目破棄、無期懲役に 差し戻し審判決

毎日新聞 2014年09月24日 21時24分(最終更新 09月24日 23時47分)

判決後に会見する津谷裕貴さんの妻良子さん(左)と遺影を手にする次男翔さん=仙台市青葉区で2014年9月24日午後4時45分、佐々木順一撮影
判決後に会見する津谷裕貴さんの妻良子さん(左)と遺影を手にする次男翔さん=仙台市青葉区で2014年9月24日午後4時45分、佐々木順一撮影
秋田・弁護士刺殺事件の経緯
秋田・弁護士刺殺事件の経緯

 秋田市の弁護士、津谷裕貴さん(当時55歳)が2010年、自宅で刺殺された事件で、殺人罪などに問われた無職、菅原勝男被告(70)の差し戻し控訴審判決が24日、仙台高裁であった。飯渕進裁判長は「複数の凶器を準備するなど計画性がかなり高く、執念深い強固な殺意があった。司法制度の根幹を揺るがしかねない重大な犯行」として1審・秋田地裁判決(懲役30年)を破棄し、求刑通り無期懲役を言い渡した。

 判決などによると、菅原被告は離婚した元妻の代理人になった津谷さんに恨みを抱き、10年11月4日未明、津谷さん宅に拳銃や剪定(せんてい)ばさみの片刃を持って侵入。津谷さんは菅原被告から拳銃を奪い取ったが、駆け付けた警察官が津谷さんを犯人と間違えて取り押さえた。そのすきに菅原被告がはさみで津谷さんの胸などを刺した。

 裁判員裁判だった1審は殺意を認めて懲役30年としたが、2審・仙台高裁秋田支部は「菅原被告が拳銃を奪われる前に引き金を引いた行為を争点にしなかったのは法令違反」として1審判決を破棄。検察側の上告を受けた最高裁第3小法廷は「引き金を引いた段階での殺意の有無は1審の公判前整理手続きで双方が主張していた」などとして2審判決を破棄し、仙台高裁に差し戻していた。

 公判で弁護側は「もみ合った際、刃物が突き刺さった」と無罪を主張したが、飯渕裁判長は「警察官が居合わせる中で被害者への攻撃を繰り返した」と退けた。1審判決については「個人的な恨みを重視しすぎ、悪質性や計画性を過小評価した」と指摘した。

 判決後、記者会見した津谷さんの妻良子さん(57)は「やっと、夫の無念を少しでも晴らせる判決をもらえた」と話した。

 事件を巡っては、誤って津谷さんを取り押さえた警察官2人が県外の弁護士から業務上過失致死容疑で告発されたが、秋田地検は11年12月、容疑不十分で不起訴とした。遺族は県などを相手取り、損害賠償を求める訴訟を秋田地裁に起こしている。【松本紫帆】

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