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アリババがとうとう上場。楽天との比較で分かる、国内EC市場の限界

 中国の電子商取引最大手アリババ集団は2014年9月19日、米ニューヨーク証券取引所に上場した。上場初日は、公募価格である68ドルを大きく上回る93ドル89セントで取引を終えた。時価総額は約25兆円となり、アマゾンやフェイスブックを超え、同社はグーグルに次ぐ巨大ネット企業となった。

 同社は、阿里巴巴(アリババ:企業間取引)、淘宝網(タオバオ:オークション)、天猫(Tmall:ショッピングモール)という3つの主力サイトを持っているが、それぞれの分野で50%~80%という高い市場シェアを持っている。
 同社のビジネスモデルは基本的に楽天に近く、商品を直接販売するのではなく、販売店からの手数料を主な収益源としている。ただアリババと楽天と比較すると、その市場環境の違いが明確になってくる。

 アリババの直近1年間の総取扱高は30兆円を超えている。アマゾンは約8兆円(アマゾンは直販の数字のみ)、楽天は約2兆円なので、とにかく規模が大きい。

 アリババの2014年4~6月期の売上高は157億7100万元(約2791億円)、営業利益は65億4400万元、純利益は124億3800万元だった。同じ期間の総取扱高は約8.5兆円なので、単純に計算すると、商品の販売代金から得られる手数料率は約3.3%ということになる。
 一方、楽天の同じ期間の総取扱高は6131億円、電子商取引の売上高(トラベル含む)は443億円、営業利益は212億円である。商品の取扱代金から得られる手数料率は7.2%ということになる。

 つまり楽天の方が、出店者から2倍以上の手数料を取っている計算になる。アリババも楽天も売上高に対する営業利益率は約50%程度で大差はない。そうなると、楽天はとにかく出店者からたくさん手数料を取るビジネス・モデルということになる。

 実際、楽天の出店者は、楽天から月額基本料金のほかに、システム利用料、決済手数料、アフィリエイト利用料など様々な手数料が徴収される。一部の出店者からは、楽天本体が手数料を取り過ぎているという声も上がっているが、楽天側にはそうしなければならない事情がある。

 それは日本のEC市場のそのものの問題である。実は日本のEC市場はすでに枯れた市場となっている。楽天の利用者は思いのほか高齢者が多く、40歳以上の利用者が約半数を占めている。つまり、日本においては、ネットを利用する潜在層のほとんどは取り込んでしまった可能性があるのだ。
 一方、アリババは中国EC市場にまだまだ伸びる余地があるため、手数料は上げずに、出店者を増やす方が売上げを拡大しやすい。楽天の成長を維持するためには、出店者からより多額の手数料を取る以外に方法はない状況にある。

 このところ楽天の三木谷社長は、海外進出の加速について強調している。こうした方向性を強く打ち出している背景には、国内EC市場の飽和が大きく影響していると考えられる。

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