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■1ミリ―ミャンマーの銀行で両替を拒否された100ドル札の破れ幅

 ミャンマーの人たちは、米ドルのピン札が大好き。わずかな破れや折り目にも厳しいチェックが入るのは日常茶飯事だ。でも、自国紙幣チャットはボロボロじゃないの。いったいどうして?

 ミャンマーの玄関口、旧首都ヤンゴンの空港。地元銀行の両替カウンターで日本語観光ガイドのミョーミンさん(44)は、日本人観光客の男性に謝っていた。

 到着口で出迎えた男性が両替しようとした50ドル札の受け取りを行員が拒んだのだ。「銀行なのにどうして」。不満は言葉が通じるミョーミンさんへ向かう。

 紙幣には折り目の筋が付いていた。「ミャンマーの銀行はそういう決まりなので、すみません」。行員の代わりにわびると、男性は「(両替は)やめよう」とむっとしながら空港を出た――。昨年末にミョーミンさんが経験した出来事だ。

 ミャンマーでは、現地通貨チャットへの両替や外国人のホテル代の支払いは米ドルで、というのが一般的だ。ドル札を受け取る側は目を皿のようにして紙幣の状態をチェック。古くくたびれたものや、新しめでも書き込みや押印や折り目、破れなどがあると両替レートが下がるか、最悪の場合、受け取りを拒まれる。

 「観光客に嫌な思いをさせたくないので、客の紙幣を受け取り、自分のドル札を代わりに出してあげることもあります」とミョーミンさんは苦笑する。

 ヤンゴンにある一部の外国大使館も、ミャンマー人のビザ申請料でドルの新札を公然と求める。ミャンマー人旅行者が急増するタイ大使館のウェブサイトは「新札のみ受領。よい状態で印や傷のないもの」。

 タイでは古いドル札も流通しているのになぜ? タイ人の書記官は「大使館のドル口座があるミャンマー政府系銀行が受け付けてくれないから」と説明した。

 これには、米大使館の米国人職員も「世界でもかなり特別な国だ。平均的な質の紙幣も受け取らない」と驚く。「長く国際社会からの孤立が続いたせいではないか」と理由を推測した。